■ドイツとスイス、そして日本
私の住むシュトゥットガルトから急行列車に乗れば、2時間ほどでスイスの国境を越える。東京から長野へ行くのとさほど変わらない。しかも、スイス国民の6割以上の人々は、少々アクセントが異なるとは言え、ドイツ語を母国語として使っている。この両国は似たところが多い。
たとえば、どちらも規則がたくさんあり、皆がその規則を割とちゃんと守るところが似ている。赤信号で車は止まるし、駐車違反も少ない。両国とも財政規律を重んじ、ヨーロッパの他の国と比べると、失業率は低く、収入も多い。公共の場所は清潔で、どこでトイレへ入ってもびっくりしない。
だが、だからといって、彼らがお互いに好き合っているかというと、それは別だ。ドイツ人は、「スイスは素晴らしい。ただ、スイス人さえいなければもっと素晴らしい」と皮肉るし、「我々の(悪い)性格をさらに徹底すれば、スイス人が出来上がるだろう」などという、ドイツ人特有の自虐的ギャグもある。
ひょっとすると、彼らは似すぎていて、近親憎悪のようになっているのかもしれない。いずれにしても、お互いをちょっとバカにしながら、実は一目置いているというのが、スイス人とドイツ人の関係のようだ。
さて、では、スイスと日本はどうかというと、これまた面白い。公共の場所が清潔で、真面目に規則を守り、勤勉で、製造業が強いといったところは、ドイツとの共通点とほぼ重なる。また、スイスには峻険な山が連なり、日本は海に囲まれているため、両国とも自由な動きを阻まれ、昔から少し閉塞感があったところも似ているだろう。
ただ、違うところも多々ある。スイス人はEUの真っただ中にありながら、頑としてEUには入らない。NATOにも加わらない。しかし、それを孤立などとは考えない。この国の人々は、他国民とつるむ必要性をあまり感じていないようだ。
それに比して我々日本人は、何をするにも仲間を探し、仲間が見つからないと、すぐに自信をなくしてしまう。なかなか「我が道を行く」ことができない。国内では価値のある「和の精神」だが、それを、利害の異なる外国との関係にまで広げようとするので、うまくいかない。外交といえば、諸外国では軍事であり、商業利権の争奪であるが、日本ではなぜか国際親善っぽい。
スイスは、男子国民皆兵制を含む堅固な国防体制を守り続けている。永世中立国であるからといって攻撃されない保障などないと考えており、強い軍隊を持つことが国是だ。
スイスの国防省の正式名は、「国防、民間防衛、スポーツのための省」だ。危機感を保つため、それなりの学校教育がなされる。いまも「有事」という言葉が生きており、国民は有事には蜂起する覚悟だ。「スイスには軍隊はない。スイス自体が軍隊だ」と言われるが、軍国主義と民主主義を、ここまで上手にミックスした手腕は大したものだといえる。
今となっては、スイスよりもずっと多くの危険にさらされているように見える日本人が、まったく危機感を持たずに、国防もエネルギー調達も他国に全面的に依存して暮らしていることを知れば、彼らは腰を抜かすに違いない。
■スイスが豊かな経済を謳歌できるワケ
経済を見ても、スイスと日本は決定的に違う。スイスは輸出に負った国であるが、日本は人口が多い上、国民にちゃんと購買力があるため、内需が強い。生産したものを自分たちで買えるというのは、幸福なことだ。
2013年、スイスの輸出依存度(GDP比)は31.7%だが、日本のそれは14.5%。スイスは人口が800万強しかいないので、作ったものを輸出しなければいけないのは、ある意味で当然だが、実はヨーロッパの大国ドイツも輸出依存度は高く、30%を超える。
つまり、ドイツ企業は輸出で儲けているが、自治体はかなり貧乏で、公共投資がされにくく、道路や学校など、インフラのオンボロさ加減は相当なものだ。
さて、スイスと日本、決定的に違うのは一人当たりのGDPだ。2015年の統計では、スイスが世界第2位で、日本が26位(IMF-World Economic Outlook Databases)。26位というのは、財政破綻国フランスよりも低く、それどころか、その混沌さのあまり“白いインド"と陰口を叩かれているベルギーよりもさらに低い。
イタリアやイスラエルとどっこいどっこいの水準となると、円安を考慮したとしても、ちょっと低すぎる!
それどころか、2015年に発表された国連のWorld Happiness Reportによると、スイス人は世界で一番幸福で、日本の幸福度は46位。これはエルサルバドルよりも低い。我々はそれほど薄幸な国民なのだろうか? これも納得できない。
輸出依存度が高いスイスが豊かな経済を謳歌しているのに、自動車やデジカメなどの消費財に加えて、資本財から精密機械、材料工学まで幅広く力量を発揮し、安全な原子炉まで作れて、かつ内需が安定している日本が苦戦しているのは、すごくおかしい。
日本は自然にも恵まれている。冬でも風光多彩で、山へいけばスキーができ、南国では海水浴さえできる。冬のあいだ国中が凍てつき、それが何ヵ月も続くスイスよりも、生産性においても、精神の安定においてもはるかに恵まれていると、普通なら思う。
冷静に見て、私たちが手にしているカードは、スイスよりも多いはずだ。その私たちが幸せでないなんて、いったいどういうことなのだろう?
そう思った途端、スイスへの興味が湧いた。どうせ近いのだから、行って、見てくればいい。スイスフランがめっぽう高いのが玉に瑕だが、そのスイスフランとて、考察の対象としてはなかなか興味深い。
■日本人がうちに秘めている力
欧州債務危機でユーロがへたり始めてから、投資家のお金がスイスフランに逃げ込んだため、高騰が始まった。輸出国スイスとしては、自国の通貨が高くなりすぎるのは一番困る。しかもスイスはEU向けの輸出が全体の6割を占めている国だ。対ユーロのスイスフラン高は深刻な事態だった。
これを是正しようと、2011年9月、スイス中央銀行が介入し、1ユーロ=1.20スイスフランの為替レートを設定した。「ユーロがもう少し落ち着くまでの荒療治」というつもりであったに違いないが、ユーロはその後も一向に落ち着かなかった。それどころか、落ち着く見通しさえない。
そこで、2015年1月、スイスの中央銀行は、その固定レートを再び突然撤廃したのである。20分後には、1ユーロが0.8スイスフランまで高騰し、世界中の為替市場が混乱した。誰もが理解できない不思議な金融政策だった。
結局、その後遺症は今も続き、スイスの中央銀行は介入を止められない。おそらく金庫には、ここ5年来、買い続けてきた大量のユーロが唸っているだろう。日本が輸出に依存していないことは、まさに僥倖なのである。
2016/11/20
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2016/11/20
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source : 2016.11.18 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 (クリックで記事開閉)
韓国大統領 月山明博(李明博)の…天皇陛下への「不敬発言」
痛惜の念などという単語一つを言いに来るのなら、来る必要はない。
日王は韓国民に心から土下座したいのなら来い。
重罪人にするように手足を縛って頭を足で踏んで地面に擦り付けて謝らせてやる。
重罪人が土下座もしない、言葉で謝るだけならふざけた話だ。
そんな馬鹿な話は通用しない。
それなら入国は許さないぞ。
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