source : 2016.09.27 iRONNA (ボタンクリックで引用記事が開閉)
ヒラリー・クリントン氏の健康不安問題により、ドナルド・トランプ氏が米国大統領になる可能性が急激に高まっている。選挙は水物であり、まだ一ヶ月以上を残しているため、どちらが大統領になるのかわからない状態ではあるが、日本のメディアや有識者などではそれを懸念する声も大きい。では、なぜこのような懸念が生まれているのか考えてみたい。
世界各国、基本的に『リベラルな思想』を持つメディアが多く、これは米国も同様である。また、米国では、日本の放送法における公平性規定がなく、各社支持、政党支持候補を明確にした報道が行われている。
衛星放送で手軽に見ることができ日本語同時放送を行っていることもあり日本でよく引用されるCNNなどは左派リベラルメディアの典型であり、放送内容に関して、限りなく歪んでいると言わざる得ない。なぜならば、政治ニュースの殆どがトランプ批判であり、トランプへのネガティブキャンペーンの代表格的なメディアであるからだ。 また、共和党よりとされるFOXなども、トランプ氏は共和党主流派の候補ではなく、主義主張で異なる部分が大きい為、好意的な報道が少ないのである。
つまり、既存メディアのどれを引用しても孫引きしても、トランプに不利な情報ばかりになってしまうのである。ここに世論とマスメディアの大きな乖離が見られるわけだ。そうでなければ、トランプ氏が国民の大きな支持を受け大統領候補に選ばれることなどなかったわけである。
また、トランプ氏へのネガティブキャンペーンばかりになる理由は他にもある。それは対立候補であるヒラリー氏が原因であり、出す政策が印象論ばかりで具体策が何も無いからである。ヒラリー氏の演説を一時間聞いたところで『アメリカ初の女性大統領』以外の要素はほとんど出てこない。だから、ネガティブキャンペーンに終止する結果になるわけだ。
自由の国であったはずのアメリカであるが、ここ数年、ポリティカル・コレクトネス(政治的公平)といわれる『差別やヘイトを理由にした言葉狩り』は日本以上のものがあり、ここに不満を持つ国民も多かった。例えば、議会の議長であるチェアマンはマンが男性形であるため、男女を問わないチェア・パーソン、スチュワーデスが女性形だからという理由でキャビンアテンダントに変更されたのがその典型である。そして、それを聖域にした不可触化(タブー)が行われてきたのである。
しかし、ここに不満を持つ米国民は多く、あえて不可触に触れ、議論を始めたのがトランプ氏だったわけだ。だからこそ、メディア特にリベラルメディアにとって、彼は絶対に許せない存在であり、そこに不満を持つ多くの米国民の支持を集めることが出来たのである。
また、彼の主張は明確であり、『アメリカファースト』アメリカ第一主義を唱え、その具体策に関しても非常にわかりやすいものであったのも彼への支持の要因になっているといえる。『中高齢層には古き良き強いアメリカ』 『若年層には保護主義と不法な労働者追い出しによる雇用の拡大』 『恐怖にはイスラム教徒排斥』と具体的かつ不満を持つ米国人にはとても魅力的に見えるオプションが並んでいるのだ。 私はトランプ氏の主張は、その是非と実現性を除いて『選挙演説としては正しい』と考える。選挙は国民の意志を問うものであり、国民の意見の代表者が政治家であるからなのだ。
そして、日本製品批判はかなりの的外れではあるが、経済政策の方針に関しては米国にとって正しいと考える。リーマン・ショックにより米国を中心とした先進国と新興国の構図は大きく変わった。
米国金融が世界を席巻している状況においては、米国から新興国への投資利益が金利や配当という形で米国に還流し、それがサービス業を中心とした経済と雇用の拡大を生み出していた。しかし、リーマン・ショックによりこの構造は破壊され、米国には投資利益がほとんど還流せず、安価な人件費で作られた新興国産品のみが流入するようになった。新興国の安価な産品の流入=雇用の略奪であり、これでは一部のグローバル企業の資本家を除き、米国労働者は貧しくなるばかりだからである。だからこそ、中国などからの製品に課税を行うことは労働者の保護と国家の発展基盤に繋がると思われるからなのである。
但し、前段で述べたようにそれが日本に向けられるのは間違っているといえる。なぜならば、特に自動車を中心に米国で売られている日本製品は主に米国製であるからなのである。日米自動車摩擦と貿易摩擦交渉により、日本のメーカーは日本からの輸出をやめ、現地生産に切り替えたのだ。
また、電気など他の製品も完成品輸出であり消費者向け商品の生産(BtoC)から、主要部品や生産機械などの生産(BtoB)に業態を変えており、ほとんど摩擦が生じない構造になっているからなのである。問題があるとすれば、日本のメーカーが中国やASEANなどで生産し米国に輸出している産品であり、それは日本製ではないからなのである。また、多くの日本のメーカーは新興国の賃金上昇により最終消費地生産に切り替え済み又は切り替える方向で生産計画を進めており、北米向けはNAFTA(米国自由貿易協定地域)で作られているものが中心になってきているからである。
トランプ氏の日本批判発言は無知が原因であると考えられ、この点に関しては、きちんと説明すれば問題にならないと考えるものである。また、日本によくある誤解として、大統領になればなんでも出来るというものがあるが、これは全くの間違いであることも述べておきたい。日本の総理と違い米国の大統領は議会演説以外、議会には参加しない。そして、米国大統領の権限は、非常時などの統制権と議会が出してきた議案に対する拒否権があるのみであり、あくまでも議会が優先する仕組みなのである。だからこそ、議会との関係が悪化すれば裸の王様になってしまうため、実際に必要なのは議会対策ということになるのだ。
そして、議会対策として考えるならば、日本としては関係が深く、政権与党である自民党とのパイプが太い共和党のほうが望ましいのであろう。その場合、トランプ氏の勝利は決して悪いばかりではないといえる。
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