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2016/03/01


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【捏造メディア】ムスリム女性に毎日新聞が陳謝 憲法企画で「取材不十分」認め

 source : 2016.02.28 日本報道検証機構(GoHoo) (クリックで引用記事開閉)

日本人ムスリムが周囲との摩擦に悩んできた姿に焦点を当てた毎日新聞の年頭企画記事について、同社の社会部統括副部長らが2月21日、取材を受けた弁護士の林純子さんと会社員の女性に面会し、記者が事前に原稿を確認する約束を守らなかったことや取材に不十分な点があったことなどについて「誠に残念であり申し訳なく思っております」などと述べて陳謝した。

林さんは記事掲載直後にフェイスブック上で、事実誤認や意図と異なる表現が多々あり「非常に残念」と表明していた。林さんらは日本報道検証機構の調査に応じ、取材時に言っていないことが本人の言葉や思いであるかのように記され、記事全体の印象が実態とかけ離れていると指摘。当機構が質問状を出し、毎日新聞社による今回の対応に至った。しかし、林さんらは「重大さを認識しているように思えない」などと同社の対応に納得しておらず、第三者機関「開かれた新聞委員会」での審議を求める意向を明らかにした。

問題となった記事は、1月4日付朝刊社会面トップに掲載された企画「憲法のある風景・公布70年の今」(全5回)の第3回目。日本国憲法第20条が定める信仰の自由をテーマに、昨年司法修習を終え弁護士登録したばかりの林さんと通信会社に勤める女性(記事では匿名、ここでは「Aさん」と表記)=いずれも30代、東京都内在住=が取材を受け、記事化された。

東京本社版の見出しは「信じる私 拒まないで」「イスラム教の服装、習慣 就活、職場で壁に」と記され、ヒジャーブを着けた林さんとAさんの写真を掲載。林さんらがイスラム教に入信後、就職活動、家族、司法試験、職場などで数々の「壁」に直面したエピソードが記事の主軸となっており、見出しのメッセージと相まって、2人が「信仰が目に見える形での摩擦」に苦悩してきたとの印象を残す記事になっていた。毎日新聞の社会部長はこの記事をツイッターで「ムスリムで悩み悩んだ人たちを追いました」と紹介。ニュースサイトにも掲載された記事は、大きな反響を呼んだ。

しかし、林さんは自分が大きく取り上げられた記事を見て「え?誰のことこれ?」と仰天。自分と異なる人物像が独り歩きすることの怖さを感じたとして、当日朝にフェイスブックに記事への反論文を投稿した。Aさんも言っていないことが書かれ、ショックを受けたという。

「憲法のある風景」第3回記事の各本社・支社版の見出し
【東京】 信じる私 拒まないで/イスラム教の服装、習慣 就活、職場で壁に
【大阪】 ヘジャブの私認めて/日本人ムスリム 偏見との闘い
【西部】 信じたい 堂々と/日本人ムスリム 恐れる偏見/「ヘジャブは服の一部」
【中部】 信じること 迷わない/イスラム教の服装、習慣 就活、職場で壁に
【北海道】 ムスリムを拒まないで/就活や職場で受け入れられない独自の習慣

■林純子さんが記事の掲載当日午前中にFacebookに掲載した反論文
Junko Hayashi
1月4日
■ 2016年1月4日の毎日新聞の記事について
取材を受けた後、草稿の段階で原稿を見せてもらい、正確でない点や気になる点については変更をお願いしました。しかし、今日記事として掲載されたものを確認しましたら、変更していただけなかったところが多々あることがわかり、困惑しております。
皆様には些細なことに思われるかと思いますが、私には大切なことですので、ここで指摘させていただきます。
■ 大学生の時の就活でヒジャーブについて言われたことは、私が弁護士を目指したことと全く関係がありません。
幸い弁護士としての就活では素晴らしい事務所から内定をいただくことが出来ましたが、弁護士業界だからと言って、雇用者側がヒジャーブについて全く考慮しなかったという印象は受けていませんし、雇用者側としてそれは当然のことだと考えています。
そもそも、大学生の時の就活で苦労したのも、ヒジャーブだけが原因だった訳ではなく、私の未熟さが主たる原因だったことは明らかです。ですから、就活を通してヒジャーブで差別されているなどと考えたこともありませんでしたし、不満を感じたこともありませんでした。
また、ヒジャーブについてのコメントをいただいたエピソードについて「忘れられない」と書かれていますが、取材の中でも何時間もお話をした後にようやく思い出したような出来事で、完全に忘れていた昔の話です。私にとっては、ヒジャーブについて差別されたというようなエピソードではなく、私のことを評価し教えてくれた親切な面接官の方がいた、というポジティブなエピソードであり、当然ながら、この会社に対しても面接官の方に対しても良い感情しか抱いておりません。
これらの点について、記者の方にきちんと説明し変更をお願いしたのですが、受け入れてもらえず、非常に残念に思っております。
■ 両親については、私がムスリムになったことで、私の将来や身の危険について非常に心配を掛けてしまいました。もちろん両親の心配は痛いほど良くわかりますし、心配してくれることをありがたく思っています。また、それにもかかわらず、私の選択を尊重してくれ、嫌な顔もしないで一緒に出掛けたり、私のためだけに別メニューの食事を用意してくれたり、会社で働かせたりしてくれました。両親には感謝してもし切れません。
それなのに、両親が私がムスリムになったことに反対しているだけのような表現がされていて、非常に残念です。この点については特に、もっと配慮してもらえるようにお願いしたのですが、受け入れてもらえませんでした。両親がこの記事に気付かないように、読んで傷つくことがないように祈るばかりです。
■ 司法試験でのヒジャーブの中の確認については、初めてのケースであったにもかかわらず、ヒジャーブ着用自体を問題にされることはなく、女性の監督官の方に別室で確認していただくなど配慮していただいて、司法試験委員会の方々には感謝しております。
ヒジャーブがスカート等と同じく服の一部であるという認識はその通りですが、ヒジャーブの中を確認されたことにつき、若干の面倒くささの他には、不満を持っているということはありません。
また、記事では出て来ていませんが、受験回数を重ねるごとに確認はされなくなって来て、最後の司法試験の受験でも、管轄は異なりますが二回試験でも、確認されることはありませんでした。理解を深めていただけたのかと思い、嬉しく思っておりました。
それにもかかわらず「スカートの中を覗かれたようで悲しかった」というような表現がされていて、私の意図と異なり残念に思っております。
記者の方にこの点も時間をかけて説明したのですが、「怒り」か「悲しみ」のどちらかを入れないといけないというように言われ、悲しみという表現がされております。
■ 記者の方には、取材をする前から書きたいストーリーがあり、それに合うように私の話した中からエピソード等を拾われたのだと思います。今回に限らず、ジャーナリズムとはそういう知的活動なのだと思いますし、担当者の方には熱心に誠実に取り組んでいただいたと思っておりますので、仕方ないと思う部分もあります。
しかし、今回の件で、自分の名の下に、自分とは異なる人物像が出来上がり、独り歩きすることの恐さを痛感しました。今回の記事で、今までお世話になった方々に誤解を与えてしまいましたら、心よりお詫び申し上げます。
2016年1月4日
林 純子

■事前の原稿に強い違和感 正月早々に逐一説明

林さんらは1月17日、当機構の調査に応じ、取材の経緯などを明らかにした。

林さんらへの取材を担当したのは、関西地方の支局に勤務する20代の男性記者(ここでは「K記者」と表記。毎日新聞は署名記事が原則だが、この記事は「憲法70年取材班」とだけ記されている)。2人とも12月にK記者と何度か会って入信経緯など様々なことを聞かれたという。

林さんは年末にK記者からメールで送られてきた原稿に間違いが多かったため、「正直なところ、かなりの違和感を持ちました。このまま新聞に掲載されるのは困ります」と返信。正月の2日にK記者を呼び、事実の間違いや意にそぐわない表現などを逐一説明して修正を要請。「ムスリムが差別されてかわいそうだというイメージを出したくなかった。かえって排除されやすくなるかもしれないし、ムスリムのためにもよくないことだと思い、実態とあわないから変えてほしいと繰り返し伝えた」という。しかし、実際の記事は、一部修正されていたものの、多くの点で書き換えられていなかったと指摘している。

一方、Aさんは、会社の指示で匿名と事前の原稿確認を条件に取材に協力すると伝えていた。しかし、原稿確認の約束が果たされないまま掲載された。K記者から「完全に私のミス」とお詫びのメッセージが届いたという。

「信じる私 拒まないで」や「ヘジャブの私認めて 偏見との闘い」といった見出しとともに掲載されたが、2人はそろって、自分たちの実像や思いとは異なると語った。しかも、個々の記述にも事実関係の誤りや意図と異なる表現が多くみられると指摘する。

記事では、林さんについて「法律家を志した原点に、かつて言われた忘れられない言葉がある」として、大学時代の就職活動でのエピソードを紹介。ある文具会社の採用担当者からヒジャーブについて「それを着けたままだと、弊社の規則に引っかかる可能性があります」と言われ、「個人的な義務でしているだけです」と伝えたところ、連絡が来なかった、と記されている。しかし、林さんは、これは「忘れられない言葉」どころか「完全の忘れていた昔の話」で、担当者に「個人的な義務でしているだけです」と伝えた事実もないし、法律家を目指した動機とは全く関係がない出来事だという。

また、司法試験当日にヒジャーブの中を確認されたことについて「悲しくなった。合格後、司法研修所に配慮を申し出た」と記されている。しかし、林さんは、ヒジャーブの中を確認されたときは面倒くささを感じた程度で「仕方がない」と理解していたという。また、司法試験に合格したときの受験時はヒジャーブの確認はされておらず、そのことで司法研修所に配慮を申し出たわけではなかった。司法試験でも司法修習でも必要な配慮はすべてなされ、嫌な思いは全くしていなかったという。

一方、Aさんについては、「過激派組織『イスラム国』(IS)による日本人人質殺害事件があった昨年1月。ヘジャブ姿で電車に乗っていると、高齢女性から暴言を浴びた。『クズ』。事件が影響していると思い怖くなった」というエピソードが書かれている。しかし、Aさんがこの出来事に遭ったのは昨年1月のように読めるが、実際は昨年秋ごろ。記者には「(取材を受けた昨年12月から)数か月前」の出来事として伝えたという。そのため、昨年1月に起きた事件が影響しているとは考えておらず、「事件が影響していると思い怖くなった」とは話していないという。

また、Aさんが記者に語った言葉として「日本人は、表向きは差別しないと言っているけど、特定の宗教を信じることにどこかアレルギーがある。信じている人を拒む権利なんてないはず」と鍵かっこで引用されている。大見出し「信じる私 拒まないで」は、この発言から取られた可能性がある。しかし、Aさんは「信じている人を拒む権利なんてないはず」というコメントは全くしていないと指摘した。モスク内部にいる様子の写真のキャプションにある「ここは仲間がいて安心する」という鍵かっこつきの言葉も、自分の発言ではないという。K記者に「ここは仲間がいて安心するか」と問われ、「ムスリムではない友達もいっぱいいるので、別にそんなこと感じていない」と答えたという。

■当機構の立ち会いを条件に面会 「取材不十分」の説明に納得せず

こうした林さんらの説明を踏まえ、日本報道検証機構は1月18日、毎日新聞社に質問を送った。その直後にK記者から2人に面会してお詫びをしたいと申し入れがあり、いったん2月2日に面会が決まった。しかし、林さんらは日本報道検証機構の立ち会いを要望したのに対し、K記者とともに来た千代崎聖史・社会部統括副部長が拒否し、面会は中止。その後、林さんらの要望に当初難色を示していた毎日側が当機構の楊井代表の同席を承諾し、2月21日に東京都内のホテルで両者の面会が実現した。

面会には千代崎氏とともに社長室広報担当者も同席したが、K記者は同席しなかった。千代崎氏は用意した文書を読み上げ、林さんがフェイスブックで遺憾を表明したにもかかわらず対応が遅れたことや、Aさんとの約束に反し事前に原稿の相談をしなかったことを陳謝。取材に不十分な点があり、結果として不快な点が残る記事になったとして「誠に残念で申し訳ない」とお詫びした。ただ、記事の内容に関しては、記者は修正すべき点は修正し、了解を得たと判断して記事化したと説明。これに対し、林さんは「取材が不十分」という問題とは質が異なるとして納得せず、Aさんも自身が言っていない発言が掲載された問題を改めて指摘し、K記者本人が来なかったことも問題視した。千代崎副部長はK記者に聴き取り調査をして会社としての見解をまとめたと強調。しかし、K記者が記事掲載直後に林さんに電話を入れた回数について認識の食い違いも表面化し、話し合いは進まなかった。

面会終了後、2人は当機構に対し、毎日新聞側の対応は納得できるものではなかったとして、第三者機関の開かれた新聞委員会での審議を求める意向を明らかにした。一方の毎日新聞社も、当機構の再質問に対し、林さんらに示したのと同じ見解を改めて表明したうえで、今後は開かれた新聞委員会で審議する方向で検討すると回答した。開かれた新聞委員会は、ジャーナリストの池上彰氏ら4人の外部委員が苦情申立てなどを審議し、紙面で結果を公表することがある。



■林純子さんのコメント
(お詫び文には)私がフェイスブックに投稿した後に記者が携帯電話に3度電話したとあるが、私の記憶では着信は1度だけ。メールもなかった。掲載前に時間をかけて原稿の間違いを指摘したが、きちんと修正されておらず、了解などしていない。記事が出た後の対応も含め、私と異なる人物像を名前と写真を載せて独り歩きさせた重大さを認識しているように思えず、謝罪として受け入れられない。開かれた新聞委員会での審議を求めたい。

■Aさんのコメント
事前に記事を確認させてくれるという約束を守らず、記事の内容も私の伝えたことと違うのに「ご了解いただける内容だと考えた」というのは勝手すぎる。しかも、この間、当事者どうしで話し合いしたいと繰り返し言っていたのに、記事作成に関わった記者を連れて来なかったことも疑問。今後このようなことを繰り返さないためにどう取り組むのかを知りたい。私も開かれた新聞委員会での検証を望む。

■日本報道検証機構・楊井人文代表のコメント
検証すべきポイントはいくつかある。林さんらによると、K記者は取材時に「この記事で日本在住ムスリムがより住みやすくなる助けになれば」という思いを繰り返していたという。一方で、林さんは事前に「理解してもらえなくて可哀想なムスリム」というイメージは実像と乖離しているし、ムスリムにとってためになるわけではないと伝えていた。社会部長が掲載日にツイッターで「ムスリムで悩み悩んだ人たちを追いました」と、取材を受けた本人たちが唖然とするような記事宣伝をしていたところをみると、林さんの訴えは取材班や編集責任者には届いていなかったようにみえる。なぜ、ストーリーは軌道修正されなかったのか。「ストーリーありき」だとの批判はメディア報道の信頼低下の一因になっているからこそ、この根深い構造の解明と対策が望まれる。

いうまでもなく、新聞記事は一人の手によってつくられるものではなく、取材記者だけに責任があるわけではない。今回の記事は「私」が見出しに入り、本文にも一人称で思いを語っている表現が使われている。こうした人物の内面に焦点を当てる記事はかなり難度が高く、ふだん記者クラブに属して当局や企業の動向を追いかけている記者はそれほど経験を積んでいないと思う。今回の若い記者の野心的な仕事を、周りがきちんとサポートしチェックできていたのかも問われよう。

事後対応にも重大な問題がある。林さんがフェイスブックで声をあげ波紋を呼んでいることを承知の上で、日本報道検証機構が動くまで対応しなかった。フェイスブックで「両親がこの記事に気づかないように(…)祈るばかり」「自分とは異なる人物像が出来あがり、独り歩きすることの恐さを痛感」と漏らしているのを見て、私は相当深刻な事態だと思った。そう感じず、記者や会社に直接抗議してくるまでは様子をみよう、何も言って来なければ大したことはないだろう、という感覚だったとすれば、書かれる側のダメージや心情への想像力が欠けているといわざるを得ない。報道被害を受けた側にとってマスメディアに物申すことはハードルが高い。できれば加害者と直接話したくないし顔も見たくない、しかし受けた損害の重大さを直視して反省してほしい、という被害者心理も理解する必要がある。

今回、当機構が動いてもなお、対応をしばらくK記者任せにしたままだった。このような問題が起きたときには、経験豊富な然るべき立場の人間が対応しなければならないのに、火に油を注ぐチグハグな対応ぶりに目も当てられなかった。もちろん、いくつかの非を認めて陳謝したことは一定の評価はできる。だが、真相も原因も究明できていないし、その姿勢もまだ乏しいようにみえる。毎日新聞は他に先駆けて「開かれた新聞」というジャーナリズムの理想を掲げてきたわりに、外部対応や危機管理が拙いように感じられた。この機会に、読者・社会からの信頼性を向上させるためにも、外部対応の体制や対処を見直してみてはどうだろうか。

とはいえ、今回の記事でひとつ救われるのは、記事全体が与える印象とは裏腹の、林さんの明るい笑顔の写真である。これは林さんの人物像をうまくとらえた一枚だといえる。これだけでも掲載する価値があったと思う。


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