source : 2014.12.03 JBpress (ボタンクリックで引用記事が開閉)
■日本の濡れ衣は晴らされるのか?
米国のジャーナリズムは、日本の慰安婦問題に関してこれまで一貫して「日本軍による組織的な女性の強制連行があった」という誤認をそのまま報じてきた。「20万人の性的奴隷」という虚構である。
だが、その米国ジャーナリズム界にもついに亀裂が生まれてきた。「日本軍の強制連行はなかった」との認識を公表する有力ジャーナリストが登場してきたのである。
その米国人ジャーナリストは、「日本の慰安婦は明らかに軍隊用の売春だった」との認識を示し、「慰安婦を『日本軍が組織的に女性を強制連行した性的奴隷制度だ』などと断じるのは、日本を米国から離反させようとする政治工作だ」とも述べる。日本にとっては、これまでの国際的な冤罪を晴らすことにつながる歓迎すべき動きと言えるだろう。
■慰安婦問題の取材を始めたマイケル・ヨン氏
この人物は、イラクとアフガニスタンの戦争報道で全米に知られたマイケル・ヨン氏である。同氏はフリーの軍事記者として2004年からイラクで米軍部隊への「埋め込み(エンベッデッド)」従軍記者活動を始め、主にブログを通じた迫真の報道が高い評価を得るようになった。
2005年5月には、イラクの激戦地モスルで自動車爆弾によって重傷を負ったイラク人の少女を米軍将校が抱きかかえる写真とその事件の詳報を発信した。この写真と記事はイラク戦争の悲劇を衝撃的に伝えた報道として、全米で話題となった。
米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)出身のヨン氏は2008年には『イラクの真実の時』と題する本を出版し、ベストセラーとなった。こうした最前線からの報道はニューヨーク・タイムズ、USAトゥデイなど大手紙のほかNBC、CNN、FOXなどのテレビでも頻繁に取り上げられた。
ヨン氏は対テロ闘争と民主化という観点から米軍の活動を支持しており、イラクでの米軍増派計画の必要性を強調していた。2008年頃からは拠点をアフガニスタンに移して取材を続け、最近ではタイの政変をバンコクから報道している。
ヨン氏は「米国人ジャーナリストでは最も長い年月を戦場で過ごした人物」とも言われており、インターネットを通じての報道は、2007年、2008年に「全米最高の軍事ブログ報道」賞を受賞している。
米国でこれほど広範に知られた実績を持つヨン氏が、日本の慰安婦問題の調査を始めたという。しかも、これまでの調査の結果、「日本軍の強制連行」を出発点とする米国の主要ニュースメディアの報道は間違っているという結論を打ち出したというのだ。
■なぜヨン氏は面会を求めてきたのか
この10月、慰安婦問題の調査のために日本を訪れたヨン氏に東京で会った。私はふだんの勤務地のワシントンを離れて、たまたま日本に滞在していた。ヨン氏に会ったのは、知人を通じて先方からの取材の申し込みがあったからである。
49歳のヨン氏は、米国人男性にしては小柄だが、精悍そうな人物だった。ヨンという名前はアジア系を連想させたが実はヨーロッパ系で、すでに数代にわたってアメリカ国民なのだという。ヨン氏はフロリダ州で生まれ育ち、10代で米国陸軍に志願し、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)に入隊した。数年後に除隊してから本格的な高等教育を受け、ジャーナリズムの道を目指したのだそうだ。
ヨン氏は、一体なぜ日本の慰安婦問題に関心を抱いたのだろうか。
本人に問うと、まず最近、タイを拠点としてアジアの諸問題に目を向けるうち、地政学的な観点から、慰安婦問題が日本、中国、韓国、そして米国までをも巻き込む政治や安保に影響する大きな摩擦要因となっていることが分かってきたという。ヨン氏はそのことに関心を持った。また、イラクやアフガニスタンの戦場でも「軍隊と性」には関心を持っており、その延長線上でもあるとのことだった。
ヨン氏が私に面会を求めてきたのは、米国のテレビ番組での私の発言を知っていたからだという。2007年5月、ワシントン駐在の産経新聞特派員だった私は、ニューズウィーク国際版の編集長などを務めた米国人ジャーナリストのファリード・ザカリア氏から、慰安婦問題についてのテレビインタビューを受けた。ザカリア氏は、全米各地にネットワークを広げるPBS(公共放送網)テレビに定期的なニュースインタビュー番組を持っており、その番組への出演を私に求めてきたのだ。
当時、アメリカ連邦議会下院には慰安婦問題で日本を非難する決議案が出されており、日本の慰安婦問題が少しずつ話題の輪を広げていた。私はその番組に出て、ザカリア記者の多数の質問に答えた。1対1のインタビューで合計15分ほどの長さの番組だった。
私は、日本軍が女性たちを組織的に強制連行した事実はないという点などを強調した。この応答はビデオとなり、その後も関係者たちの間では参照されてきた。ヨン氏はその番組のビデオを3回も見たのだという。そして私の当時の発言に強い関心を抱いたとのことだった。
慰安婦問題についてヨン氏はすでにかなりの調査を済ませていた。米国では取材班を組んで、国立公文書館の膨大な資料も調べていた。カリフォルニア州のグレンデールも訪れ、全米で最初に建てられた慰安婦の像や碑を見て、多数の関係者にあたっていた。タイでも東南アジアの慰安婦関連の動きを調べ、韓国にもこれから出かけて調査を続けるという。日本でもすでにかなりの人数の学者や専門家、議員らに会い、取材をしたとのことだった。
■「強制連行の主張は虚構であることを確信」
結局、ヨン氏とは東京で2回会って、かなりの時間をかけて質疑応答や意見・情報の交換を行った。ヨン氏は慰安婦問題についての自分自身の考察や見解として、以下のような諸点を明確に述べた(同氏が自分のブログや他のサイトで記した見解もある)。
■いまこそ日本は濡れ衣を晴らすとき
- 私は米国人だから、慰安婦問題に関して極めて中立的な立場にある。私は、あくまで人道主義のアプローチと地政学的な考察を進め、その立場から真実を突きとめたい。
- これまでの調査で、「日本軍が組織的に20万人の女性を強制連行して性的奴隷にした結果が慰安婦だ」という主張にはなんの根拠もなく虚構であることを確信するにいたった。
- 米国政府は2000年頃からドイツや日本の戦争犯罪の再調査のためにIWG(各省庁作業班)という組織を作り、慰安婦問題などを8年もかけて調べた。だが、慰安婦制度の犯罪性や強制連行を示す米政府や軍の書類は一点も発見されなかった。
- インドネシアやフィリピンで、日本軍の一部将兵が地元などの女性を強制的に性の対象にした事例はあった。しかしそれは日本軍の方針に違反する行為であり、個別に罰せられた。
- 日本軍の慰安婦制度は基本的に商業的な売春である。朝鮮半島の新聞に募集広告が載り、慰安婦たちが所得を得ていた証拠が多数存在する。
- 軍隊に売春がつきものという現実は昔もいまも変わらない。現在も世界各地の軍事基地の周囲には売春婦たちが存在する。米海軍の艦艇がタイ、シンガポール、あるいは米国内の港に来れば、売春目的の女性たちが近くの施設に集まってくる。将兵は少しのカネさえ持っていれば、女性を強制連行する必要はないのだ。
- 過去も現在も韓国内の米軍基地は韓国女性の売春婦たちを吸い寄せることで有名である。
- 韓国の一群の女性たちがつい最近、韓国政府を相手どって、「政府に強要され、米軍将兵のための売春婦にさせられた」という訴訟を起こしたが、日本の慰安婦問題を提起する米韓両国の勢力はその事例に触れようとしない。
- 軍事の常識からしても、戦場で敵軍と戦う軍隊が自分たちの後方で地元の女性を20万人も拉致して奴隷のように監禁し、しかも彼女たちの生活を世話しながら共に移動するなど、考えられない。
- 日本はすでに慰安婦が存在したことへの謝罪を表明し、賠償金までを提供した。だが日本糾弾勢力は日本がいくら謝罪しても賠償しても、日本を叩き続ける。日本国民はなんの責任もない過去の事案を理由に不当な攻撃を浴び続けている。日本人は、日本を叩くこと自体に真の目的があることを知るべきだ。
- 慰安婦問題で日本を糾弾する真の主役は中国であり、韓国がそれに便乗している。中国当局は米国内で在米中国系の「世界抗日戦争史実維護連合会」という政治組織を動かして、反日活動を進めている。中国側の狙いは日本と米国の同盟の絆を弱めて、離反させることだ。
ヨン氏は以上のような主張を述べるとともに、「現在の日本は世界の中で、民主主義、平和主義、人道主義を最も実践する国なのだから、慰安婦問題での不当な糾弾に対して断固として反論すべきだ」と強調する。そしてヨン氏自身も、これからこうした調査結果をまとめて、米側の主要メディアを通じて、米国民向け、さらには国際社会向けに慰安婦問題の真実を発表していくつもりだという。
私は長年、米国での慰安婦問題をめぐる動きを追ってきたが、米国の大手ジャーナリズムの慰安婦問題に関する不公正、不正確な扱いに失望を重ねてきた。そんな私にとって、米国でこれほど冷静かつ客観的な対応が出てきたことは大きな驚きであり、新たな光のように思えた。日本側としてはもちろん大歓迎したい見解である。しかもヨン氏はアメリカ国内で広く知られたジャーナリストなのだ。
ヨン氏のような米国の言論人が、慰安婦問題に関して日本の立場を支持する見解を表明するようになるとは、つい最近まで想像もできなかった。いや、日本の立場というよりは事実ということである。日本の真実を世界に理解してもらうためには、やはり発信する努力を重ねなければならないという鉄則を改めて思い知らされた。
日本や日本国民にとって、慰安婦問題の現在までの世界での扱いは完全に濡れ衣である。日本にとっての「世紀の冤罪」とさえ言えるだろう。その濡れ衣を晴らすのはあくまで日本自身の使命である。だが、このタイミングでのヨン氏の言明は極めて心強い援軍であり激励でもあると言えるだろう。
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