source : 2014.11.12 産経ニュース【月刊正論】 (ボタンクリックで引用記事が開閉)
誤報の責任には頬被りして「被害者だ」と騒ぎ立てる。厚顔無恥。鉄面皮。やはりこの新聞につける薬はない(麗澤大学教授・八木秀次 月刊正論12月号)
■責任も果たさず被害者ヅラだけはご立派
朝日新聞は本当に反省しているのだろうか。9月11日夜の木村伊量社長の謝罪も、「吉田調書」についての記事への謝罪がメインで、慰安婦を強制連行したとする吉田清治証言を16本の記事で使用したことや、慰安婦と女子挺身隊を「誤用」したことへの謝罪は序でないし付け足しで、如何にも誠意を感じなかった。さらにここに来て朝日は、なんと被害者ヅラをし始めている。同時に、吉田証言をめぐる自社の報道の影響について矮小化し、他人事視あるいは責任回避を決め込んでいる。
10月1日付朝刊第2社会面に「慰安婦報道めぐり脅迫文 2大学に元朝日記者の退職要求」との見出しの記事が掲載された。記事の前半は「北星学園大(札幌市厚別区)に今年5月と7月、慰安婦問題に関する記事を書いた非常勤講師の元朝日新聞記者(56)の退職を求め、応じなければ学生に危害を加えると脅す文書が届いていたことが捜査関係者への取材で分かった」とするもので、匿名となっているが、非常勤講師の元朝日記者とは植村隆氏であることは周知のことだ。
記事によれば、文書は学長ら宛で、5月29日と7月28日に郵送で届いた。印刷された字で「元記者を辞めさせなければ天誅として学生を痛めつける」「釘を混ぜたガスボンベを爆発させる」などと書かれ、それぞれ数本の虫ピンが同封されていたという。9月中旬には「爆弾を仕掛ける」との内容の電話もあったという。記事の後半は「帝塚山学院大(大阪府大阪狭山市)にも9月13日、慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者の人間科学部教授(67)の退職を要求する脅迫文が届き、(中略)元記者は同日付で退職した」とするもので、ここでも「辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。釘を入れたガス爆弾を爆発させる」などと記されていたことが書かれている。
脅迫は卑劣で決して許されないが、手口が古典的で、「天誅」という表現や「釘を入れたガスボンベ(ガス爆弾)を爆発させる」などという言い方など、北朝鮮への批判が強まった時に折よく起きた朝鮮学校生徒のチマチョゴリ制服切り裂き事件などをも彷彿させる。本当に朝日新聞の慰安婦報道に怒った人々の仕業なのかと、不自然さも感じる。
しかし、この記事の掲載を合図に朝日は被害者ヅラをし始めた。翌2日付の社説は「大学への脅迫 暴力は、許さない」と題し、脅迫文の内容を紹介した後、「攻撃の対象は元記者本人にとどまらない。家族までもがネット上に顔写真や実名をさらされ、『自殺するまで追い込むしかない』『日本から出て行け』などと書き込まれた」と被害者ぶりを書く。
「間違った記事を掲載してしまったことに対して多くの批判が寄せられており、真摯に受け止めている」とも書いているが、北星学園大学へ脅迫文が送られたのは、8月5、6日の慰安婦報道検証記事掲載の前、木村社長の謝罪の前である。脅迫が許されないのは勿論だが、「間違った記事を掲載してしまった」のに訂正も謝罪もなく、朝日新聞社にも元記者にも「真摯」な姿勢が微塵も感じられないことが大学への抗議となり、思い余って脅迫につながったとも考えられる。
7日には1面コラム「天声人語」でもこの問題を取り上げ、第3社会面で「慰安婦報道 元記者の家族も攻撃」「ネットに子の写真や実名」との見出しを付けた「Media Times メディアタイムズ」という大型の記事が掲載されている。記事では「この元記者は今春、朝日新聞社を早期退職した植村隆氏(56)」と実名を明らかにし、「3月以降、電話やメール、ファックス、手紙が教職員あてに数多く届き、大学周辺では政治団体などによるビラまきや街宣活動もあった」とする。そして同僚教員に「もはや植村さんだけの問題ではない。大学教育、学問の自由が脅かされている」と語らせている。さらに学者や弁護士、ジャーナリストらが「負けるな北星!の会」を結成し、記者会見で「学問と言論の自由を守るため市民は結束すべきだ」と訴えたとする記事も併せて掲載している。自由と民主主義を守るためには学問と言論の自由が重要であることは言うまでもない。しかし、大学への脅迫という事態にまで発展したのは、植村氏が「間違った記事を書いてしまったこと」について、その経緯を明らかにすることなく、メディアの取材からも逃げ回り、挙句の果てには「記事は捏造ではない」と現在も言い張っていることにも原因がある。彼に「学問や言論の自由」に伴う責任を果たす気はあるのだろうか。
この点、私はこの大型記事に他の二人の識者とともにコメントを寄せ、「慰安婦問題を報じた元記者が中傷されていることを当事者の朝日が問題視して、読者の理解を得られるだろうか。普段、企業や役所の不祥事を厳しく追及しているのだから、執筆の経緯を元記者が自ら説明すべきだ。ただ、個人を『さらし者』にして攻撃するネット文化にくみすることはできない。脅迫は許されないし、職を奪うまでの行為は行きすぎている」と話した。「脅迫は許されない」との見出しが付けられたが、言いたいことはもちろん前半にある。
続きは月刊正論12月号でお読みください
■八木秀次氏
昭和37(1962)年、広島県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程中退。専攻は憲法学、思想史。「日本教育再生機構」理事長。著書に『反「人権」宣言』(ちくま新書)、『明治憲法の思想』『日本国憲法とは何か』(PHP新書)『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。平成14年、正論新風賞を受賞。
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