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2014/03/23


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【高橋昌之のとっておき】朝日・毎日への反論(7)集団的自衛権行使

 source : 2014.03.22 産経ニュース (クリックで引用記事開閉)

国会では20日に平成26年度予算が成立し、今後の論戦は安倍晋三政権が実現を目指す集団的自衛権を行使するための憲法解釈の変更が焦点となります。このため、新聞各紙は社説で集団的自衛権行使の是非に対する主張を掲げていますが、従来通り、産経、読売両紙が「賛成」、朝日、毎日両紙が「反対」です。

私は昨年8月と10月の2回にわたり、このコラムで朝日、毎日両紙の集団的自衛権行使への反対論について問題点を指摘してきましたが、両紙の主張は相変わらず、安全保障政策を論ずるものではなく、「平和主義、立憲主義の否定だ」などという観念論に終始しています。

これでは、今後の議論がまたしても「神学論争」に陥ってしまって、「あるべき政策論議」は行われないのではないかと懸念していますので、この問題を取り上げます。集団的自衛権の行使がなぜ必要かについては、昨年10月のコラムで詳しく書いていますので、今回は朝日、毎日両紙の主張の問題点を指摘することに力点を置きたいと思います。

朝日、毎日両紙の主張は集約すると、政府が「集団的自衛権は保有するが、憲法上、行使することは許されていない」としてきた憲法9条の解釈を変更し、「行使できる」とすることは(1)戦後日本の平和主義を否定することになる(2)一内閣が恣意(しい)的に憲法解釈を変更することは立憲主義の破壊につながる(3)近隣諸国の不信と反感をあおるだけだ-というものです。

朝日は3日付の社説で「解釈で9条を変えるな」と題し、「(集団的自衛権を)持っているけど使えない。そんなおかしな議論をしているのは日本だけだという批判がある。でもそれは、戦後日本が憲法9条による平和主義を守ってきたからこそで、おかしいことではない」と主張しました。

毎日も「問題だらけの解釈変更」と題した14日付の社説で、「政権内では、集団的自衛権を『持っているのに使えないのはおかしい』という議論もよく出る。国際法上認められている権利でも、国家の理念や政策上の判断から行使を留保するのはおかしいことではない」としました。

私には「今問題のコピペではないか」と思えてしまったほどそっくりの文脈なのですが、そもそも集団的自衛権行使の議論を「おかしい」とか「おかしくない」という短絡的な次元で扱っていることにまず問題があります。議論はあくまで日本の外交・安全保障政策に基づいて行われるべきで、とても大新聞の社説の議論とは思えません。

また、安倍政権が憲法解釈の変更を閣議決定で行う方針であることについて、朝日の社説は「憲法の精神から照らして許されることではない。必要だというなら、国会での論戦に臨み、憲法96条が定めた改正手続きに沿って進めるのが筋だ」としました。

これは憲法学者の一部や内閣法制局長官経験者らがよく展開する議論です。一見、筋論を展開しているように見えますが、集団的自衛権の行使を認めさせないための「方便」にしかすぎません。憲法96条は改正の発議について「衆参各院の3分の2以上の賛成」という政治が現実的にはクリアできない要件を課しており、いわば「できるはずがない」ことを見越したうえで「やれるならやってみな」という主張なのです。

私は憲法という最高法規であっても、その解釈は時々の国際、社会情勢によって見直しが行われるのは当然だと考えます。米ソ対立のもと、日本が何もせずに平和と安全が保たれていた冷戦時代はとっくに終わり、日本にも国力に応じた軍事的貢献が求められるようになってきた国際情勢の変化を顧みず、解釈を変更してこなかった歴代内閣の方こそ問題なのです。憲法は改正すべきですが、その前にまず憲法解釈が現在の情勢に適合しているかを検証し、適合していなければ見直すことは、法学的な観点から言っても当然のことです。

もうひとつ、朝日、毎日両紙のそっくりな主張を挙げると、憲法解釈の変更を「安倍首相の一存」と決めつけていることです。朝日は「(憲法解釈の変更が)時の首相の一存で改められれば、民主国家がよってたつ立憲主義は壊れてしまう」とし、毎日も「一内閣の判断だけで、安全保障政策の重大な転換を行い、戦後日本の平和主義を支えてきた憲法9条を骨抜きにしてはならない」と主張しました。

しかし、これは完全に誤った認識で、平成24年12月の衆院選と25年7月の参院選の結果を無視した主張です。自民党はこの直近2つの選挙で、公約に「憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能にする」と明記して圧勝し、その結果を受けて安倍首相は進めようとしているのであって、「首相の一存」ではありません。

それをそろいもそろって「首相の一存」などと書くのは、自らの反対論をあおるために国民をミスリードしているとしか言いようがありません。したがって、憲法解釈の変更は「民主主義の否定」でも「立憲主義の否定」でもなく、朝日、毎日両紙の主張は根本から崩壊していると言えます。

また、「近隣諸国の不信と反感をあおるだけ」という主張も同じです。朝日は「(安倍首相は)A級戦犯がまつられている靖国神社に参拝する。そんな政権が安保政策の大転換に突き進めば、中国は一層の軍拡の口実にするし、欧米諸国も不安を抱くに違いない」、毎日も「私たちは先に安倍政権の外交姿勢や歴史認識への懸念から、集団的自衛権の行使容認に今踏み出すべきではないと主張した」と指摘しました。

要は「安倍政権は過去の反省を忘れて軍国主義に突き進もうとしている」と言いたいのでしょう。しかし、靖国神社参拝について言えば、安倍首相の真意は自ら述べたように「日本は二度と戦争を起こしてはならないという過去への痛切な反省の上に立って、戦争犠牲者の方々の御霊を前に、不戦の誓いを堅持していく決意を新たにした」ということです。

また、歴史認識についても、慰安婦に関する河野談話の検証などを警戒しているのでしょうが、石原信雄元官房副長官が「事実に基づいたものではなく単なる心証によって作られた」と証言した以上、事実を検証するのは当然のことです。

これらのどこに問題があるのでしょうか。問題がないのに問題だと中国や韓国の反発をあおっているのは、まさに両紙ではありませんか。それと集団的自衛権の行使を無理やり結びつけて、「中韓両国が反発するからやめるべきだ」というのは両紙の「マッチポンプ」にほかなりません。

一方、集団的自衛権をめぐる最近の朝日の社説や報道ぶりで「本質から外れた姑息(こそく)な手法」と感じる点があります。それは小松一郎内閣法制局長官に対する「個人攻撃」です。14日付では「天声人語」と社説で、小松長官が「安倍首相は国家安全保障基本法案を国会に提出する考えではないと思います」と答弁したことを取り上げ、「官僚の出過ぎた発言」と大々的に批判し、「法制局は実質的に『法の番人』の役割を果たしてきた。その役割からして忠実であるべきなのは、首相ではなく憲法に対してだ」と主張しました。

しかし、小松長官は別に「憲法より首相の意向の方が大事だ」という趣旨の発言をしたわけではなく、それほど大騒ぎするほどの答弁だとは到底、思えません。朝日のこの取り上げ方には「小松長官を辞任に追い込んで憲法解釈の変更をやめさせよう」という姑息な思惑があるのは明らかです。

そもそも内閣法制局はこれまで、自己を正当化するために従来の答弁との整合性ばかりを考え、国際情勢の変化などに対応した憲法解釈の検討を行ってきませんでした。その体質を私は取材を通じて知っています。それこそ朝日も批判している「官僚主導」の権化が内閣法制局だったのです。内閣の一部局である以上、首相の方針を受けて憲法解釈を検討するのは当然のことです。最終的な「法の番人」は最高裁判所であって、朝日の言うように内閣法制局が「法の番人」であるかのように振る舞ってきたことこそ、政府の憲法解釈を実態とかけ離れたものにしてきた最大の要因なのです。

さらに、朝日は17日付の社説で、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」についても、「『空疎なのはどっちだ」という見出しで、「首相と志を同じくする仲間が並ぶ。『結論ありき』の疑念はぬぐいようがない」と批判しました。

しかし、私が見る限り、懇談会は現下の国際情勢を踏まえて日本のあるべき外交・安全保障政策について真摯(しんし)に議論していると思います。メンバーも朝日が望む人物は入っていないかもしれませんが、優れた専門家で構成されています。それを議論の中身を政策的に指摘することなく、「空疎」だと決めつける朝日の社説こそ「空疎」です。

朝日、毎日両紙に対しては何度も同じことを言いますが、こうした本質から離れた批判や観念論で反対論を展開するのはもういい加減にやめませんか。集団的自衛権の行使に反対なら反対でも構いませんが、それなら「集団的自衛権を行使しなくても日本の平和と安全は守っていける」という政策的な根拠を堂々と示して、議論を展開してもらいたいと思います。

これは反対している野党も一部自民党議員にも同じことが言えます。国民は観念論による「神学論争」ではなく、本格的な政策論議を通じて、集団的自衛権を行使すべきか、行使すべきではないかを判断したいと望んでいるはずですから。


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