source : 2013.09.26 首相官邸 (ボタンクリックで引用記事が開閉)
ご列席の皆様、初めに、ジョン・アッシュ大使の、議長就任を、ご一緒にお祝いしましょう。
議長――、
まずシリア情勢について、新たなプレッジを、述べようと思います。
化学兵器が使われたことは、私を含め、日本国民に、深い衝撃と、怒りを呼び起こしました。化学兵器は、二度と再び、使用されてはなりません。
シリアの化学兵器の廃棄に向けた国際社会の努力に、我が国は、徹底的な支持と、能うる限りの協力を表明します。
無辜の市民が犠牲となり続ける状況に、義憤を覚えざるを得ません。暴力の停止、政治対話の開始、劣悪な人道状況の改善を、喫緊の課題と考えます。いま、この瞬間にも、数を増す難民たち。その支援にも、我が国は、一層の努力を傾注します。
国内避難民に、あるいは、国境を越えて逃れる難民に、国際社会と連携し、手を差し伸べます。我が国NGOやボランティア組織が、彼らのため、昼夜兼行で働いていることを、私は誇りとします。
国際社会の助けが及びにくい、反体制勢力の支配地域に対しても、我が国は、支援を続けます。医療センターで働くスタッフに訓練を施し、持ち運びのできるX線装置など、医療器具を届けます。
行く手に厳しい冬を控え、難民たちの絶望が増すいま、シリアと、周辺国への人道支援として、我が政府は、新たに、6000万ドル相当を追加し、直ちに実施することを、表明したいと思います。
こうした支援を、今後、ジュネーブ2を始めとする、政治対話のプロセスと並行させ、国際社会の皆様と協力しつつ、進めていく決意です。
さて、議長とご列席の皆様、
私達の国とその首都東京は、7年後の2020年、オリンピック、パラリンピックを、ホストする栄誉に浴しました。
手にした僥倖に報いる私の責務とは、まずもって、日本経済を、強く建て直すこと、そのうえで、日本を、世界に対して善をなす・頼れる「力」とすることです。
私はここに、日本を今まで同様、いえ、世界はいよいよ悲劇に満ちているのですから、むしろこれまで以上に、平和と、安定の力としていくことを、お約束します。
それは国際社会との協調を柱としつつ、世界に繁栄と、平和をもたらすべく努めてきた我が国の、紛うかたなき実績、揺るぎのない評価を土台とし、新たに「積極的平和主義」の旗を掲げようとするものです。
世界のパワーバランスが急速に変化し、技術の革新が、新たな機会と、新種の脅威とをボーダーレスにもたらしつつある点からして、いかなる国といえども、今や一国のみでは、自らの平和と、安全を守ることなどかないません。
日本が、地域と世界の平和、そして安定のため、付加価値の創造者、ネットの貢献勢力として、世界から信頼を集めようとするゆえんです。
かかる状況下、国連が果たすべき役割の重要性は、いや増します。我が国が訴え続けて今日に至る、「人間の安全保障」の理念もまた、今まで以上に意味合いを増すでしょう。
人間の安全保障委員会(Commission on Human Security)が報告書を提出してから9年に亘る議論の積み重ねを経て、昨年9月、その共通理解に関する決議が、ここ国連総会で採択されました。先人達の英知も借りながら、更なる概念の普及と実践の積み重ねを進めていく決意です。
日本として、積極的平和主義の立場から、PKOを始め、国連の集団安全保障措置に対し、より一層積極的な参加ができるよう、私は図ってまいります。国連の活動にふさわしい人材を、我が国は、弛まず育てなくてはならないと考えます。
議長とご列席の皆様、
開かれた、海の安定に、国益を託す我が国なれば、海洋秩序の力による変更は、到底これを許すことができません。
宇宙、サイバースペースから、空、海に至る公共空間を、法と、規則の統(す)べる公共財として、よく保つこと。我が国に、多大の期待がかかる課題です。
原子爆弾の惨禍を知る我が国は、核軍縮と不拡散、ひいては核廃絶に、ひたすら貢献します。
北朝鮮の核・ミサイル開発は、許されざることです。同国にあり得べき他の大量破壊兵器についても、強い懸念を留保しています。北朝鮮は、国際社会の一致した声に耳を傾け、おのれの行動を改め、具体的一歩を踏み出すべきです。
北朝鮮には、拉致した日本国民を、残らず返してもらいます。自分が政権にいるうちに、私は、これを完全に解決する決意であり、また本問題の解決を抜きに、日朝の国交正常化はあり得ません。
イランの核問題については、同国新政権が具体的な行動をとることに期待し、我が国として、その解決に向け、引き続き役割を担う用意があります。
世界の平和、繁栄にとって要石となる中東地域において、我が国は、中東和平プロセスに対し及ぼしてきた、独自の貢献を続けましょう。
今世紀における成長エンジンとなるのが必定のアフリカ諸国に対して、我が国は、自らの経験を踏まえた協力を続けます。すなわち人材の育成を主眼とし、オーナーシップを涵養しつつ、持続可能な成長を図ろうとするものです。
去る6月、我が政府は、アフリカ各国首脳、国際機関の代表を日本へ招き、開発に関わる会議「TICAD V」を開きました。
席上、アフリカ各国代表が、民間投資を切望すると、異口同音に述べたことに、私はいたく感銘を受けました。
アフリカに対する投資フローは、今や、援助のフローを凌駕しました。援助とは、投資を招く触媒としてこそ、戦略的に活かされるべきであるとの声、また声を聞きました。
TICADプロセスの20年が見守り、かつ、盛り立ててきた議論の進化です。TICAD Vは、アフリカが歩んだ道のりをことほぐとともに、日本が、彼らとともに夢を紡ぐ、変わらぬパートナーだった事実を、確かめ合う場となりました。
議長、ならびに列席のみなさま、
日本外交の進路は、自らの力を強くしつつ、これら、世界史的課題に、骨惜しみせず取り組むところに開かれると、私は信じて疑いません。
まったく、「骨惜しみをしない」こととは、日本の振る舞い――外交であれ何であれ――を基調づける、通奏低音に違いないと思います。
かような意思と、力、実績をもつ国として、安全保障理事会の現状が、かれこれ70年前の現実を映す姿のまま凍結され、今日に及んでいる事実を、はなはだ遺憾に思います。
安保理は、遅滞なく改革されなくてはならず、我が国は、常任理事国となる意欲にいささかも変わるところがないことを申し添えます。
議長、そしてご列席の皆様、
すべては、日本の地力を、その経済を、再び強くするところに始まります。日本の成長は、世界にとって利得。その衰退は、すべての人にとっての損失です。
ではいかにして、日本は成長を図るのか。ここで、成長の要因となり、成果ともなるのが、改めていうまでもなく、女性の力の活用にほかなりません。
世に、ウィメノミクスという主張があります。女性の社会進出を促せば促すだけ、成長率は高くなるという知見です。
女性にとって働きやすい環境をこしらえ、女性の労働機会、活動の場を充実させることは、今や日本にとって、選択の対象となりません。まさしく、焦眉の課題です。
「女性が輝く社会をつくる」――。そう言って、私は、国内の仕組みを変えようと、取り組んでいます。ただしこれは、ただ単に、国内の課題に留まりません。日本外交を導く糸ともなることを、今から述べようと思います。
私はまず、国際社会を主導する一員となるための貢献を、4点にわたって述べてみます。
第一に日本は、UNウィメンの活動を尊重し、有力貢献国の一つとして、誇りある存在になることを目指し、関係国際機関との連携を図っていきます。
第二に、志を同じくする諸国と同様、我が国も、女性・平和・安全保障に関する「行動計画」を、草の根で働く人々との協力によりつつ、策定するつもりです。
第三に我が国は、UNウィメンはもとより、国際刑事裁判所、また、「紛争下の性的暴力に関する国連事務総長特別代表」であるバングーラ(Zainab Hawa Bangura)さんのオフィスとの、密な協力を図ります。
憤激すべきは、21世紀の今なお、武力紛争のもと、女性に対する性的暴力がやまない現実です。犯罪を予防し、不幸にも被害を受けた人たちを、物心両面で支えるため、我が国は、努力を惜しみません。
第四に我が国は、自然災害において、ともすれば弱者となる女性に配慮する決議を、次回・「国連婦人の地位委員会」に、再度提出します。2年前、大災害を経験した我が国が、万感を込める決議に、賛同を得たいと願っています。
議長と、ご参集の皆様、
ここから私は、3人の個人に託し、「女性が輝く社会」の実現に向けた、我が国の開発思想と、なすべき課題を明らかにしたいと思います。
日本人の女性と、バングラデシュの女性を1人ずつ、3人目として、アフガニスタンの女性を紹介します。
佐藤都喜子(ときこ)さんは、母子保健の改善を、15年以上、ヨルダンの片田舎で担った、JICAの専門家でした。
村人が当初投げた不審の眼差しにひるむことなく、佐藤さんはどこででも、誰とでも、話をしました。芸能の力を借りて説得するなど、工夫に余念のなかった佐藤さんを、村落コミュニティはやがて受け入れます。
「子どもの数を決めるのは、夫であって、妻ではない」。そんな伝来の発想は、佐藤さんの粘りによって、女性の健康を重んじるものへ、徐々に変わっていったのです。
皆様も知るとおり、HIV/AIDS、マラリア、結核との戦いを世界的規模で図る「世界基金」を始めるに際し、私の国日本は、リード役を務めました。基金の増資を図る、来るべき第4次会合でも、ふさわしい貢献をするつもりです。
けれどもポストMDGsにおいては、個別疾病を超え、フォーカスを広げるべきでありましょう。
個人をその総体として捉える発想によってこそ、より高い、健康のニーズを満たせると考えた私達は、TICAD Vを機に「UHC、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」を推進することにしました。
アフリカ地域の保健対策に、5億ドルを準備し、保健医療者12万人の育成を打ち出して、目下、励んでいるところです。
万人に、医療を――。「UHC」の3文字に血を通わせる人は、具体的には佐藤さんのような、現地へ入って骨身を惜しまない人たちであるに違いありません。
さて二番目に紹介したいのは、ニルファ・ヤスミン(Nilufa Yeasmin)。バングラデシュの若い女性で、2児の母です。「ポリグル・レディー」の肩書があります。
日本ではありふれた、とある食材(納豆)から生まれたメイド・イン・ジャパンの水質浄化剤に、「ポリグル」という商品があります。汚れた水に、入れるだけ。余分な物質を吸着して沈殿し、水を透明にするのがポリグルです。
最初に正しい使い方を教える必要があり、販売員兼インストラクターになるのが、ニルファさんたち「ポリグル・レディー」というわけです。
お分かりでしょう、いわゆるBOPビジネスとして、女性の力に期待する特徴をもっています。ニルファさんは、夫の収入と合わせ、子どもを上の学校へやることができるようになりました。
幼い頃抱いた「いつかお医者さんに」という夢を、貧しさからあきらめた彼女はいま、「水のお医者さんになった」と、誇らしげに言うのだそうです。「自分への誇り」という、最も貴い財産を、ニルファさんは手にしたのだとは言えないでしょうか。
我が政府は、1人でも多くの、ニルファさんを生みたいと思います。ポリグルを作るのは、ごく小さな日本企業です。そんな会社や、団体が持ち込むアイデアを、実現する仕組みを充実させていきます。
議長、お集まりの皆様、
最後にもう一人、紹介したい女性がいます。けれどもこのアフガニスタン女性は、もうこの地上にはいません。イスラム・ビビ。今年の7月4日、凶弾に倒れました。享年、37歳。3人の子どもが残りました。
アフガニスタン警察の、誇り高き女性警察官。それがビビでした。9年勤めて重責をになったビビは、選挙監視のため、投票所を警護しました。自分に続く、若い女性警官の教育に尽くしました。
道遠し、の思いに駆られます。しかし、ひるんでいてはなりません。
我が国は、「アフガニスタンのための、法と秩序の信託基金」を通じ、同国警察力の向上に、また、女性警官の育成に、終始意を砕いた国のひとつでした。アフガニスタンにおける女性警官の数は、ようやく1800人に達しますが、到底足りません。第二、第三のビビを生まないため、支援を続けねばならない。私は、決意を新たにしています。
議長と、ご参集の皆様、
バングラデシュのニルファさんを実例として、強調したかったのは、女性の社会進出を進めることと、その、能力開発の必要性でした。
我が政府はこれを第一の施策とし、アフリカで新規事業を始めるなど、創意に満ちた努力を続けます。
佐藤都喜子という、ヨルダンで活躍した日本人女性が身をもって訴えたのは、母子保健の重要性でした。MDGsにおいて、達成に遅れが目立つ分野です。
私の政府は第二の重点施策として、女性を対象とする保健医療分野の取り組みに、力を加えます。
最後に、悲しいイスラム・ビビの実例を通じて私が言いたかったのは、平和と安全保障の分野における、女性の参画と、その保護の重要性でした。
紛争の予防と解決、平和構築に至る全段階で、女性の参画を確保するとともに、紛争下、危険にさらされる女性の権利、身体を守る対策に、努めてまいるつもりです。
以上3つの柱を立てる我が政府は、そのため今後3年、30億ドルを超すODAを実施することを、ここで明らかにしようと思います。
議長、ご参集の皆様、結びに申します。
先に紹介した「ウィメノミクス」のひそみにならうなら、女性の力を育てることに焦点を合わせる私達の開発思想は、世界に平和と、厚生を、より多くもたらすことでしょう。
日本の内でも、紛争下の地域、貧困に悩む国々でも、「女性が輝く社会」をもたらしたいと、私は念じます。楽観視など、してはおりません。しかし私は、そのため骨身を惜しまない人々が、私の国、日本に、決して少なくないことを知っているのです。
皆さんと、ともに働こうと、準備を怠らない人々です。
ご清聴有難うございました。
ニューヨーク証券取引所 安倍内閣総理大臣スピーチ
source : 2013.09.25 首相官邸 (ボタンクリックで引用記事が開閉)
本日は、このような機会を与えていただき、感謝しています。
世界経済を動かす「ウォール街」。この名前を聞くと、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーを思い出します。
1987年の第一作では、「日経平均(Nikkei Index)」という言葉が出てきます。日本のビジネスマンも登場し、日本経済がジャガーノートであるかに思われていた時代を彷彿とさせるものでした。
しかし、2010年の第二作では、出てくる投資家は中国人、ゴードンが財をなすのはウォール街ではなくロンドン。日本は、その不在においてのみ目立ちます。「Money never sleeps」のタイトルさながらに、お金は儲かるところに流れる、その原理は極めてシビアです。
たしかに、日本は、バブルが崩壊した後、90年代から20年近くデフレに苦しみ、経済は低迷してきました。しかし、今日は、皆さんに、「日本がもう一度儲かる国になる」、23年の時を経てゴードンが金融界にカムバックしたように、「Japan is back」だということをお話しするためにやってきました。
さて、明日は、マリアノ・リベラ投手にとって、ヤンキースタジアムでの最終試合です。ニューヨーク市民にとって、永遠に記憶に残るこの日に、同じ場所で時間を共有できることは、大変幸せなことです。
切れのするどいカットボール。43歳になる今でも、あの一球だけで、どんなバッターも手が出ない。世界一のクローザーとは、そういうものなのだと思います。
日本が復活するシナリオも、奇を衒う必要はまったくありません。リベラのカットボールのように、日本が本来持つポテンシャルを、思う存分発揮しさえすれば、復活できる。そう考えています。
身近なものからご説明しましょう。寿司です。ニューヨークには、本格的な寿司バーがたくさんあります。
コメと寿司ネタ、わさびとしょうゆ、そして日本酒の絶妙なコンビネーションを体験した方もいらっしゃるでしょう。全部があわさって素晴らしいハーモニーが生まれる。どれかが欠けても物足りない。日本食は、繊細な「システム」です。
私は、月に一度は、海外に出かけます。出来る限り日本のビジネスリーダーたちを連れ、日本のポテンシャルを売り込んでいます。特に日本食を持参し、実際に食べてもらいますが、寿司も、てんぷらも、カウンターはいつも大行列です。
そもそも寿司もてんぷらも、200年以上前、今の東京である江戸の庶民たちが、道端の屋台で食べていたファーストフードでした。私は、ここニューヨークでも、いつか、40丁目と5番街の交差点にあるホットドッグ屋台の隣に、寿司やてんぷらの屋台が並ぶ日を、夢見ています。
日本の鉄道も、世界に誇る「システム」です。「新幹線」は、時速205マイルのハイスピードですが、静かで快適。そして、1964年10月開業以来、一度も、死亡者はおろか、けが人を一人も出したことがない安全性の高さで、世界中から引き合いがあります。
日本の新幹線オペレーターには、その次、超電導リニア技術による新しい鉄道システムがあります。すでに日本国内では、世界最高の時速311マイルで、乗客を乗せて走る実験を重ねています。
この技術を活用すれば、ニューヨークとワシントンDCは、1時間以内で結ばれます。毎年44万3千ガロンもの「ガソリン」を浪費させるだけでなく、68万2千もの「時間」を浪費して皆さんをイライラさせる、あの「道路渋滞」からも解消されます。飛行機や自動車と比べて、時間もCO2もカットできる。まさに「夢の技術」です。
日本では、今、東京と名古屋間で開業に向けた準備が進んでいます。その前に、まずは、ボルチモアとワシントンDCをつないでしまいましょう。私から、すでにオバマ大統領にも提案しています。
皆さんは、シェールガス・シェールオイルで強い経済力を持ち、さらに化石燃料が安くなる、ラッキーな国にお住みです。日本はそうはいきません。そうはいかないからこそ、イノベーションです。
日本のエネルギー効率は、第四次中東戦争が発生した1973年と比べ、約40%改善しました。GDP千ドルあたりのエネルギー消費は、石油換算で、アメリカでは0.17トンですが、日本では0.11トンしかありません。中国は0.6トンですから、日本の省エネ技術の高さは、群を抜いています。ここに、日本の成長機会があり、皆さんの投資機会があります。
自動車向けのリチウムイオン電池は、世界の7割が日本製です。アメリカで人気のテスラモーターの電気自動車も、電池は日本製。次世代の自動車は、「インテル・インサイド」ならぬ、「ジャパン・インサイド」なんです。
高い効率を誇る日本のLED照明。白熱電球と比べ、電力消費は5分の1以下です。ある試算によれば、65億個にのぼる世界の白熱電球需要を、すべて日本のLED電球に置き換えれば、最新の原発200基分以上の省エネとなります。
そして、日本は、原発の安全技術で、これからも世界に貢献していきます。放棄することはありません。福島の事故を乗り越えて、世界最高水準の安全性で、世界に貢献していく責務があると考えます。
その福島の海では、未来の発電技術が開花しようとしています。「浮体式」の洋上風力発電技術です。現在、2メガワットクラスのものしか世界には存在しません。しかし、私たちは、今回、福島沖で7メガワットクラスに挑戦します。高さ200メートルの巨大な風車が、波の揺れにも耐えて発電する。世界に名だたる鉄鋼メーカー、重工メーカー、電機メーカーなどが参加する、日本の総力を結集する一大プロジェクトとなります。
日本のエネルギー技術は、ポテンシャルの塊です。だからこそ、私は、電力システム改革を進めます。こうしたダイナミックなイノベーションを、もっと加速していくために、電力自由化を成し遂げて、日本のエネルギー市場を大転換していきます。
新たなチャレンジには、さまざまな規制が立ちはだかります。例えば、燃料電池の開発実証には、多くの規制をクリアしなければならない。これでは、創意工夫はできません。
私は、フロンティア技術を実証したい企業には、独自に安全を確保する措置を講ずれば、規制をゼロにする新しい仕組みをつくろうと考えています。
昔ながらの頭の固い大企業は、奮起が必要かもしれません。私は、日本を、アメリカのようにベンチャー精神のあふれる、「起業大国」にしていきたいと考えています。
規制改革こそが、すべての突破口になると考えています。
「本当に改革ができるのか?」と懐疑的な方もいるかもしれません。たしかに、日本は、この数年間「決められない政治」の代表でありました。
しかし、この7月、日本国民は大きな選択をしました。「決められない政治」を生み出してきた、衆議院・参議院間の「ねじれ」を解消する選択です。私が率いる連立与党が、衆参両院で多数を取りました。政権与党のリーダーとして、私は、必ずや、言ったことは実行していきます。
「実行なくして成長なし」。アクションこそが、私の成長戦略です。
私が、日本を出発する前に、ある野球記録が塗り替えられました。1964年に、王貞治という選手が作ったシーズン55本のホームラン記録が、カリブ海出身のバレンティン選手によって更新されたのです。
ここニューヨークでは、イチロー選手が日米4000本安打という偉大な記録をつくりました。日本で海外の選手が活躍し、米国で日本の選手が活躍する。もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。
世界の成長センターであるアジア・太平洋。その中にあって、日本とアメリカは、自由、基本的人権、法の支配といった価値観を共有し、共に経済発展してきました。その両国が、TPPをつくるのは、歴史の必然です。
年内の交渉妥結に向けて、日米でリードしていかなければなりません。
自由で、創造力に満ち溢れる大きな市場を、米国とともに、このアジア・太平洋に築き上げたい。私は、そう考えています。
さて、私は、ハフィントン・ポストのブロガーもつとめております。アリアナ・ハフィントンさんには明日もまたお目にかかる予定ですが、ストレートな語り口は彼女の魅力です。
そのアリアナさんが、かつてこう語ったそうです。「もし、リーマンブラザーズが、リーマンブラザーズ&シスターズだったら、今も存続していたのではないか。」と。
男たちは、「睡眠時間が少ないことを自慢」し、「超多忙なことが、超生産的だ」と誤解している。そのような男たちは、行く先で待ち構える「氷山」を見過ごしがちだ、と彼女は言うのです。
私も、男たちの一人として、また、総理就任以来、休む暇なく働いてきた者として、この言葉が身に沁みます。この夏は、ハフィントンさんの言葉を胸に刻んで、しっかり休暇をとりました。
いずれにせよ、日本の中に眠っている、もう一つの大きなポテンシャル。それは、女性の力です。
ここニューヨーク証券取引所の初の女性会員は、ミュリエル・シーバートさんです。46年前の出来事でありました。ミッキーの言葉が頭をよぎります。
「アメリカの経済界は、女性役員こそが、人口の半分の男だけに頼っている日本やドイツに対抗する上で、強力な競争力向上の武器になることを気づくだろう」
まさにその言葉を、身を持って証明し、アメリカにおける女性の活躍をリードしてきたミッキーが、先月お亡くなりになったと聞きました。ご冥福をお祈りするとともに、これまでのパイオニアとしての活躍に、深い敬意を表したいと思います。
そして、「人口の半分の男だけに頼ったせいで」閉塞感に直面している日本を、私は、大きく転換してまいります。
日本には、まだまだ高い能力を持ちながら、結婚や出産を機に仕事を辞める女性がたくさんいます。こうした女性たちが立ちあがれば、日本は力強く成長できる。そう信じます。
そのために、日本から、「待機児童」という言葉を一掃します。2年間で20万人分、5年間で40万人分の保育の受け皿を、一気に整備します。すでにこの夏の時点で、12万人分を整備する目途がつきました。繰り返しになりますが、アクションこそ、アベノミクスです。
足元の日本経済は、極めて好調です。私が政権をとる前の昨年7-9月期にマイナス成長であった日本経済は、今年に入って二期連続で年率3%以上のプラス成長となりました。
これは、大胆な金融緩和による単なる金融現象ではありません。生産も、消費も、そしてようやく設備投資も、プラスになってきました。長いデフレで縮こまっていた企業のマインドは、確実に変わってきています。
ここで成長戦略を実行し、先ほど述べた様々なポテンシャルを開花させていけば、日本を再び安定的な成長軌道に乗せることができる。これが、私の「三本の矢」政策の基本的な考え方です。
日本に帰ったら、直ちに、成長戦略の次なる矢を放ちます。投資を喚起するため、大胆な減税を断行します。
世界第三位の経済大国である日本が復活する。これは、間違いなく、世界経済回復の大きなけん引役となります。日本は、アメリカからたくさんの製品を輸入しています。日本の消費回復は、確実にアメリカの輸出増大に寄与する。そのことを申し上げておきたいと思います。
ゴードン・ゲッコー風に申し上げれば、世界経済回復のためには、3語で十分です。
「Buy my Abenomics」
ウォール街の皆様は、常に世界の半歩先を行く。ですから、今がチャンスです。
先日、サンクトペテルブルグで、オバマ大統領からエールをもらい、その後23時間かけてブエノスアイレスに飛びました。その結果、2020年のオリンピック・パラリンピックが、東京で開催されることとなりました。
49年前の東京オリンピックは、日本に高度成長時代をもたらしました。日本は、再び、7年後に向けて、大いなる高揚感の中にあります。あたかもそれは、ヤンキースタジアムにメタリカの「Enter Sandman」が鳴り響くがごとくです。もう結果は明らかです。
偉大なるクローザー、リベラ投手の長年の活躍に最大の敬意を表しつつ、私のスピーチをおわりたいと思います。
米ハドソン研究所での安倍首相演説要旨
source : 2013.09.26 jiji.com (ボタンクリックで引用記事が開閉)
米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」主催の会合での安倍晋三首相の演説要旨は次の通り。
具体例で話す。国連平和維持活動(PKO)の現場で、日本の自衛隊がX国の軍隊と活動していたとする。突然、X軍が攻撃にさらされる。しかし、日本の部隊は助けることができない。日本国憲法の現行解釈によると、憲法違反になるからだ。
もう一つの例は公海上だ。日本近海に米海軍のイージス艦数隻が展開し、日本のイージス艦と協力してミサイル発射に備えているとする。突然、米艦1隻が航空機による攻撃を受ける。日本の艦船はどれだけ能力があっても、米艦を助けることができない。集団的自衛権の行使となり、違憲になってしまうからだ。こういった問題にいかに対処すべきか、私たちは今真剣に検討している。
私の国は、鎖の強度を左右してしまう弱い一環であることなどできない。私はわが国安全保障の仕組みを新たなるものにしようと懸命に働いている。日本は初めて国家安全保障会議(NSC)を設立する。初めて国家安全保障戦略を公にする。
本年、わが政府は11年ぶりに防衛費を増額した。すぐそばの隣国に、軍事支出が少なくとも日本の2倍で、米国に次いで世界2位という国がある。毎年10%以上の伸びを20年以上続けている。私の政府が防衛予算をいくら増額したかというと、たったの0.8%にすぎない。従って、もし私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであれば、どうぞ呼んでいただきたい。
日本は地域、世界の平和と安定に今までにも増してより積極的に貢献していく国になる。私は愛する国を積極的平和主義の国にしようと決意している。私に与えられた歴史的使命は、日本に再び活力を与えることによって、積極的平和主義の旗の誇らしい担い手となるよう促していくことだ。
安倍首相がハーマン・カーン賞を受賞 外国人で初めて
source : 2013.09.24 The Wall Street Journal. (ボタンクリックで引用記事が開閉)
安倍晋三首相は25日、米国の有力保守系シンクタンクであるハドソン研究所から、同研究所の創設者故ハーマン・カーン氏の名を冠した「ハーマン・カーン賞」を受賞する。同賞は、保守的な立場から国家安全保障に貢献した創造的でビジョンを持った指導者に毎年贈られているもので、米国人以外では初めての受賞となる。
同賞はこれまで、ロナルド・レーガン元大統領、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ディック・チェイニー前副大統領など米国の保守派指導者が受賞してきた。授賞式は25日にニューヨークで行われ、同研究所によれば、安倍氏は日本の経済改革と日米関係の持続的な重要性に関する「重要演説」を行う。ハドソン研究所は「安倍氏は、日本が活力を取り戻すために必要な改革を前進させようとしている変革期のリーダーである」と称賛した。
カーン氏は、長年にわたり日本の保守派指導者と深い関係にあった。同氏は、1940年代に物理学者としてランド研究所に入所し、「水爆戦争論」で核戦略を論じた。その後は地政学の研究に転じた。
カーン氏は、早くも1962年に日本の台頭を予想したことで名を馳せた。70年には「超大国日本の挑戦」を著し、日本が経済的にも、技術力でも、金融面でも超大国になるのは「ほぼ間違いない」と予言するとともに、軍事的にも、政治的にもグローバルな影響力を保持するだろうと述べた。
ハドソン研究所では、11年12月に石原伸晃自民党幹事長(当時)が講演し、尖閣諸島(中国名:魚釣島)の早期国有化と自衛隊配備を提唱した。それに呼応して、同氏の父親で保守政治家として名高い石原慎太郎都知事(同)が12年4月に、同じく米国の著名保守系シンクタンクのヘリテージ財団で講演、都による尖閣諸島購入計画を明らかにした。同年秋に日本政府が、都による購入を阻止するために同諸島を国有化した。
安倍氏は、ナショナリスト的な傾向を隠そうとせず、日本の安全保障の強化を図っている。しかし、まず日本の主要な課題である経済・財政上の問題を解決しなければ安全保障の問題に取り組むことはできない。安倍氏のハドソン研究所での講演は、それにどう対処するつもりなのか、新たな手がかりを示す機会となろう。
Abe First Non-American to Win Conservative Hudson Institute Award
source : 2013.09.23 The Wall Street Journal. (ボタンクリックで引用記事が開閉)
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