source : 2013.06.03 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
自らをハッカーだと言う若い男は、コンピューターソフトの脆弱性を突いてサイバー攻撃を仕掛けるプログラムを一から作り上げるプロだ。年齢、居所など一切明かさない条件で取材に応じた男は「攻撃コード(文字列)を書けるのは国内では私を入れて2、3人しかいない」と豪語する。
自分の携帯電話から別人の電話番号で発信したり、他人の携帯電話のメールをサーバーからごっそり盗み取ったりすることも、たやすくやってのける。
インターネットの裏側も見通す男は日本企業のセキュリティーのレベルは「最下層」と切って捨てる一方で、中国のサイバー攻撃の荒々しさをこう語る。
「僕らはきれいに美しくやりたいが彼らはがむしゃらだ。ドアが開かなければハンマーでぶち壊せばいい、ダイナマイトでもぶち込めばいいと思っている」
◆手荒なハッカー
大陸からの攻撃は日本に押し寄せている。「また中国か」。顧客企業から緊急呼び出しを受けたサイバーディフェンス研究所上級分析官、福森大喜は顔をしかめた。33歳と若いが、グーグル主催のセキュリティーコンテストで世界4位に入り、国際刑事警察機構(インターポール)のセキュリティーチームを指導するほどの技量を持つ。彼の分析では、中国側が日本企業の技術や政府職員を狙った「標的型メール攻撃」はここ4、5年でうなぎ上りに増え、全体の実に約7割を占めるまでになった。
問題は巧妙さを増していることだ。まずはセキュリティー意識の薄い社員らのパソコンに侵入、しばらく潜伏しながら、メールのやり取りを観察し、社内ルールにのっとった文面で幹部社員やシステム権限者にメールを送付する。受け取った者は不信感を抱かず添付ファイルをクリックして感染。知らないうちにパソコンが遠隔操作され、大量の機密情報が抜き取られる。
メールの日本語は以前にみられた不自然さが消えて洗練された。優秀な通訳が雇われた可能性もある。
福森は顧客企業に疑似攻撃を仕掛け、弱点を洗い出す侵入テストも行うが、こうした対策を講じる企業はわずかだ。
息を潜め機密情報を狙う手口は産業スパイさながら「サイバーエスピオナージ(サイバー空間のスパイ活動)」とも呼ばれる。荒々しい「動」と狡猾な「静」の二面性を帯びて中国から迫る脅威に、大半の企業は無防備な姿をさらしている。
◆競争力失う恐れ
サイバー空間では攻撃側が絶対的に有利なのも特徴だ。防御側は誰がどこから攻撃してきているか分からず、何を盗まれたのかすら分からない。サイバー攻撃の恐ろしさは敵が見えないことにある。
平成23年は三菱重工業やIHI、川崎重工業など日本を代表する企業が次々と攻撃を受けた。
24年には日本企業に計1009件の標的型メールが送りつけられたことを警察庁はつかんだが、攻撃者の特定に至るケースは皆無だ。
防御側ができる対策の糸口は情報共有であり、企業同士が受けた攻撃の情報をやり取りし、守り合う動きが広がっている。情報共有のハブの役割を果たす一つがJPCERTコーディネーションセンター。分析センター長を務める真鍋敬士(43)は、虎の子の日本の技術が知らず知らずのうちに盗まれ、国際的な競争力を失っていく事態を恐れる。
「日本の生命線は技術であり、その技術情報をたやすく盗み出される状況にある。日本という国、日本の将来を守るためには、私たちが置かれた危機に早く気づかなければならない」
(2)中国、人海戦術でサイバー攻撃…次々と改変 レベルもアップ
source : 2013.06.03 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
「おまえは外国人か? すぐにここを立ち去れ!」
中国上海市中心部の国際金融センターから東に約10キロ。住宅地に立つ12階建てビルは、米ネットセキュリティー企業マンディアントが今年2月に米政府機関や企業へのハッカー攻撃に関与していると公表した中国人民解放軍の「61398部隊」が置かれる建物だ。
公表から3カ月余り。今も警備員が鋭い視線を送り、厳重な警戒が敷かれる。公安関係者によると、ビルを撮影した外国人記者らが何人も拘束され、画像を強制消去されたという。
61398部隊の活動を暴露したマンディアント。米国の名だたる企業を標的型メールで攻撃し続けた「APT1」というグループを長年追跡し、最終的に同部隊に行き着くことを証明してみせた。141もの企業などから数百テラバイト(テラは1兆)という膨大な機密情報が盗まれたいらだちが、名指しでの公表につながったとみられる。
APT1は業界大手の米シマンテックもマーク。2006年ごろから企業などにサイバー攻撃を仕掛けるグループを「コメントクルー」と名付けて監視していたが、使われているマルウエア(悪意のあるソフト)がAPT1と同一で、両者がぴたりと重なった。
同社セキュリティーレスポンスディベロップメントマネージャ、林薫はマルウエアを分析したが、「発覚しにくいようにマルウエアを次々と改変していた。大勢のプログラマーが人海戦術で攻撃を仕掛けていた可能性もある」と指摘する。
同社によると、61398部隊の活動が明るみに出た以降も、攻撃はやまなかった。攻撃者が絶対優位なサイバー戦。「捕まることはない」とたかをくくったような態度を見せつける。
◆裾野広がりに危機感
陸上自衛隊システム防護隊の初代隊長を務め、現在はネットセキュリティー国内最大手のラックでサイバー攻撃にさらされる企業防衛の最前線に立つ伊東寛。「圧倒的な数にものを言わせた攻撃だ」と中国のサイバー攻撃の裾野の広がりに危機感を持つ。
伊東によると、中国の攻撃の態勢は61398部隊を抱える中国人民解放軍を頂点にサイバー民兵が控え、有事になれば情報関連企業の社長が部隊長に変わり、人民解放軍の傘下に入る。サイバー民兵の規模は一説には数百万人ともいわれる。
一人の天才ハッカーさえいれば、企業から情報を盗み、敵国の中枢システムにも打撃を与えられる。膨大な兵器開発費も要らない。こうしたサイバー攻撃の特性に目をつけ、中国では人材育成を急ピッチで進めているとみられる。
実際、5月中旬には湖北省の武漢大学内にハッカー技術研究や人員育成の拠点が置かれていると米国で報じられた。61398部隊は04年ごろから、武漢大学などの学生に盛んにリクルート活動を行っていたことも関係者の証言で明らかになっている。
◆「すでに戦時下だ」
マンディアントの報告書には気になるデータがある。11年に61398部隊の攻撃を受けた企業が60社近くあったが、翌年には十数社に激減した。部隊の技術が上がり、攻撃が見えにくくなった恐れも指摘される。
脅威を増すサイバー攻撃に国内ではやっと危機感が高まってきた。しかし今年度中に設置される自衛隊のサイバー防衛隊の対応力は十分とはいえず、警察や関係省庁を含め、外国のサイバー攻撃に統一して臨む態勢にはない。
サイバーセキュリティー・アナリストの松原実穂子は「日本では、水と安全はタダという考え方が続いているためサイバー攻撃の備えも十分になりにくい。敵は最も弱いところを狙ってくる」と指摘する。
ラックの伊東は、「日本の対応はアメリカより20年は遅れている」としたうえでこう続けた。
「国が国益のために行う平和的手段以外のものが戦争ならば、他国の技術情報を盗み取る行為は戦争といえる。サイバー空間ではわれわれはすでに戦時下にあるとみたほうがいい」
戦争さながらの技術の収奪。サイバー攻撃は米中首脳会談の主要テーマになるほど深刻化している。こうしたなか、急速に拡大したある中国通信機器メーカーに対する警戒感が主要国の間で広がっている。
(3)米国人技術者、謎に包まれた死…次世代半導体 うごめく中国企業
source : 2013.06.04 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
◆「命危ない気が」
シンガポールのチャイナタウンにある下級裁判所。5月15日、3階の15号法廷では、ある米国人技術者の遺体の写真がスクリーンに映し出され、犯罪科学捜査の専門家による証言が続けられていた。
「寝室のドアの上部に留め金で黒い革ひもを固定し、白いタオルを首に巻き革ひもで首をつっている」
この技術者はシェーン・トッド(当時31歳)。チャイナタウンに近いアパートの自宅で遺体が発見されたのは、2012年6月24日夕のことだ。彼のパソコンからは、両親などに宛てた遺書が見つかった。警察は遺体に外傷がなく部屋に争った痕跡もないことなどから、自殺と断定した。
だが、父親のリチャード(58)と母親のマリー(57)は、息子の死に疑問を抱く。それは彼が生前、両親に「仕事が嫌だ。中国企業との協力を頼まれた。米国の安全保障を危険にさらすようで、命が危ない気がする」と打ち明けていたからだ。
「息子の死は多くの謎に包まれ、この裁判所での検視審問で死の真相を知りたい。華為(ファーウェイ)との関係もです」
法廷の外でマリーは吐露した。「華為」とは、米国などが安全保障を脅かす存在だとして警戒する中国の通信機器大手「華為技術」のことである。
電気工学の博士号をもつシェーンが勤務していたのは、シンガポール科学技術研究庁の傘下にあるマイクロエレクトロニクス研究所(IME)。世界的に脚光を浴びる次世代パワー半導体の素材である窒化ガリウム(GaN)を、シリコン上で拡張する技術の研究開発に携わっていた。
GaN半導体は熱伝導率、放熱性、高周波動作に優れ、青色発光ダイオードや携帯電話などに使われている。問題はレーダーや衛星通信など、軍事技術に転用できるところにある。
IMEのGaN研究開発の責任者、パトリック・ロー・グオチャン(49)の法廷における証言では、IMEと華為との間には契約済みのプロジェクトが5件、契約へ向け交渉中の「潜在的なプロジェクト」が1件あった。GaN関連は交渉中のプロジェクトだけで、シェーンもこれに関与していた。
◆突然の交渉中止
「このプロジェクトは、GaNの拡張技術を使った増幅器を研究開発するものだった。IMEと華為の代表が11年7月18、19の両日に中国で会い、その後、シリコンウエハー上にGaNを結晶成長させるIMEがもつ技術についても、情報を提供した。シェーンは会議にも参加し、華為側に研究開発費として、180万シンガポールドル(約1億4480万円)を提示した」
シェーンは、グオチャンのいわば“右腕”として動いていたのだ。
だが、彼の死から間もない12年7月、華為は突然「目標が不明確だ」として降りる。この結果「プロジェクトは進まず、具体化しなかった」という。
グオチャンやシェーンの同僚は「プロジェクトは商業目的であり、IMEは中国との軍事プロジェクトには関与していない」と否定した。華為は産経新聞に「この件にはいかなる関係もない。IMEとの協力は標準、商業的な提携だ」とコメントしている。
21日、両親は「法廷は誠意に欠ける」と席を蹴った。家族側不在のまま続けられた検視審問の判断は、7月8日に出される。
■膨張「華為」に疑惑の目
携帯電話の基地局向け設備を中心に、スマートフォン(高機能携帯電話)市場に自社ブランドまで持つ華為(ファーウェイ)技術。2012年の売上高が2202億元(約3兆6千億円)と、世界最大手エリクソンと肩を並べるまでに成長した。始まりは中国・広東省深センにある古い集合住宅にある。
「14人の社員が1987年にこの場所で資本金2万1千元(現在の為替レートで約35万円)で始めた民間企業です」
華為の広報担当、蔡旭(28)によると、創業者の任正非らは建物3階の一角で、寝食をともにしながら製品の開発に没頭した。任はこの時、42歳だった。最高指導者・トウ小平の指示で中国が改革開放路線にかじを切った1980年、初の経済特区に指定された深センで、初めて民間事業の起業が許された。
創業当初、資金不足から社員への給与支払いもままならなかったため、任は給与代わりに会社の株を社員に分配した。現在も「非上場」の華為は、全世界約15万5千人の社員の半数近い約7万人が自社株を保有する。経営の独立性を貫き、今後も上場予定はない。
創業の地から北東に約20キロ。深セン市内の200万平方メートルの土地に建つ現在の本社は「キャンパス」と呼ばれる。緑の中に事務棟や研究棟、生産棟、社員寮などが整然と並ぶ。インド人や欧米人社員も珍しくない。約4万人がここで働く。会社に寝泊まりして開発に没頭した創業時の空気は「マットレス文化」ともいわれ、いまも続く。
創業の地を海外メディアに見せたのは産経新聞が初めてだといい、本社研究開発センター内部の取材と一部の写真撮影も許可した。新しいメディア戦略を始めたのは理由がある。急成長した華為への疑念が各地で広まってきているからだ。
◆「締め出し」勧告
昨年10月、米下院情報特別委員会がまとめた華為などに関する報告書が注目を集めた。報告書は元社員からの情報として同社が「中国人民解放軍のサイバー戦争部隊のえりすぐりの人物に、特別な通信ネットワークを提供している」と言及。華為などの機器を「社会基盤に供給することは安全保障上の利益を損なう危険性がある」とし事実上の「締め出し」を勧告した。
オーストラリアも昨年3月、ブロードバンド網整備計画から華為参入排除を表明。カナダも政府の通信ネットワークから華為を除外する措置をとった。
任が人民解放軍出身であることも手伝い、中国によるサイバー攻撃や技術情報スパイなどで、華為の関与が疑われているのだ。
かねて華為製品をめぐっては、コンピューターに不正侵入するための「裏口」と称される不審なバックドアが見つかったとの証言が繰り返されている。ただ、バックドアが意図的に設置されたのか、技術的な欠陥なのかは未解明だ。
また、欧州の通信会社の技術者らは「華為の機器は必要な送信データ以外に大量の不明な送信を発生している」と疑問を呈する。
一連の疑惑に対し、匿名を条件に取材に応じた華為技術の幹部は「誤解に基づくものだ」といらだちをあらわにした。記者に「なぜ米国が華為技術を嫌うのか?」と聞き、「それは華為が『中国の企業』だからだ」と自ら答えた。
某国の情報機関関係者はこうもらす。
「華為の脅威は確たるものだが、技術的な証拠となると、海を泳ぐ無数の魚の中から1匹を特定するようなものでなかなか難しい」
◆日本でも存在感
JR横浜駅近くの閑静なオフィス街の一角にあるビルに、日本政府当局者が関心を寄せる動きがある。華為が新たな拠点づくりを進めているからだ。
ビル管理会社の担当者は、「華為は19階に入る予定で、契約は数年先まで結んでいる」と話す。華為側もこの計画を認め、華為ジャパン社長、閻力大は現在約40人の技術者を「年末までに80~100人規模に増やす」と意欲を見せる。
華為が日本法人を設立したのは2005年。2年前に大手町に「日本研究所」を開設。技術者約40人の75%が日本採用だという。
閻は端末開発や通信設備で日本企業との協業を進めつつ「日本で得た成果をグローバル市場に生かしていく」のが狙いと話す。
順調に日本での存在感を増す華為。米国などとは違い、日本の国会で華為が正面から取り上げられたことはない。
(4)トヨタ、三菱…日本株投資に中国マネー ファンドに隠す国家意思
source : 2013.06.05 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
◆「警戒すべき存在」
世界最大の金融センターである米ニューヨークのウォール街で働く金融関係者の間で、「5番街詣で」という言葉がはやり始めている。5番街は高級ブランド店が並ぶマンハッタン随一の商業・住宅街。その一角に最近、中国の国家外貨管理局(SAFE)がオフィスを構え、そこにヘッジファンド関係者や弁護士らが頻繁に通っているのだ。
SAFEは中国が保有する外貨を運用する機関。運用資産ランキングでは、資源開発益を原資とするノルウェー(政府年金基金)とアラブ首長国連邦(アブダビ投資庁)に次いで世界3位に位置している。いずれも政府系ファンドだが、SAFEは性格を異にする。
米議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、SAFEについて「その投資は金融や市場経済の原理に従わず、中国の国家戦略を優先する」として、警戒すべき存在だと訴えてきた。
SAFEは1997年設立で推計運用資産5700億ドル(約57兆円)。為替介入や貿易黒字で蓄積した中国の外貨を原資にして、もっぱら米国債を中心に運用してきた。だが、足元で米連邦準備制度理事会(FRB)がリーマン・ショック後の金融危機後に打ち出した国債購入を含む一連の量的緩和を徐々に解除する「出口戦略」を模索し始めたことで、米国債価格下落(利回りは上昇)リスクが浮上。SAFEがこれを嫌い、株式やヘッジファンドなどを投資対象に拡大するとの見方がウォール街で強まっている。
現在、SAFEの総資産に占める株式資産は10%程度にすぎない。仮に機関投資家並みに株式比率をさらに20%程度引き上げるだけで、手数料を1%前後としてもウォール街に落ちる現金は約100億ドル(約1兆円)にも及ぶ。
景気回復が緩慢で新たな商機を探しきれていないウォール街にとっては、まさに「干天の慈雨」で、投資先の物色が水面下で始まっているとみられる。
その中国の「国家ファンド」ともいうべきSAFEは、すでに日本国内に入り込んでいる。
◆保有額3兆円超
詳細は明らかになっていないが、SAFEや同じく「国家ファンド」である中国投資(CIC)の資金が入ったファンドとみられるのが「OD05 オムニバス アカウント トリーティ クライアンツ」。
トヨタ自動車やパナソニック、武田薬品工業など日本を代表する有名企業の上位株主の欄に登場するファンド名だ。
このファンドの名前が上位株主として登場したのは4年ほど前。2008年のリーマン・ショックで欧米の運用会社の動きが鈍化するなか「中国による日本買いが始まった」として注目された。
ちばぎん証券(千葉市)の調査によると、平成21年3月末時点で、東京証券取引所1部上場銘柄のうち、OD05が上位株主10位に入っていた企業は十数社だったが、24年9月末の最新データでは、173社にのぼった。保有額は3兆406億円に達する。
東証1部上場銘柄の約10社に1社が大株主として迎えている形で、日立製作所やNEC、三井物産、三菱UFJフィナンシャル・グループではそれぞれ保有比率で3位の株主。時価総額に換算して最も保有額が多かったのは、1920億円のトヨタ自動車だった。
企業に対する保有比率はいまのところ5%未満にとどまる。「物言う株主」として株主総会で注文を付けるような目立った動きもない。
市場ではOD05の投資は日本企業の経営への関与が目的ではなく、株価指数に連動したパッシブと呼ばれる保有株の値上がりや配当が目当ての「純投資」と受け止められている。しかし、そこには大きなリスクが潜む。
「誰の監視も受けずに、共産党指導部が鶴の一声で『チャイナマネー』という実弾を市場を通じていくらでも撃ち込める」
中国事情に詳しい国際金融筋は、ファンドが豹変(ひょうへん)する可能性を指摘するとともに、日本企業そのものの買収に向かってくるのは「時間の問題だ」と予言するのだった。
(5)あの家電製品が危ない!大手メーカー、中国で「定点観測」の意味
source : 2013.06.06 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
「定点観測」-。大手家電メーカー内部で、中国国内で調査会社を使って模倣品が流通していないかを定期的に確認するチェック態勢のことを指す。
外交摩擦が絶えない日中だが、中国での日本ブランドの家電製品の信頼度は極めて高く、たえず模倣の標的にされている。日本の製造業が新たな模倣品の登場に警戒を強める家電製品がある。微小粒子状物質PM2・5による大気汚染が深刻化した中国で爆発的に売れた空気清浄機だ。
パナソニックなど日本メーカーの中国での市場シェアは4割を占め、大気汚染の抜本的な対策がない中、右肩上がりに売り上げが伸びると見込まれる。
夏の季節は中国の大気汚染は沈静化。日本メーカーの空気清浄機の模倣被害はいまのところ確認されていないが、「次の標的になっているのは間違いない」と、企業の知的財産担当役員らでつくる日本知的財産協会(東京)の専務理事、久慈直登は断言する。
「類似品の情報が出たらすぐ本社に報告するように」。5月上旬、関西のある家電メーカーは中国における空気清浄機の模倣品について、現地駐在の社員に指示した。
日本企業や知財関係者が危機感を抱くのは、国際ルールの抜け穴を利用してまでも需要の高い“旬”の技術を盗み出そうとする「パクリ天国」の貪欲さそのものにある。
日本の特許庁が平成11年に開設した特許情報ホームページ(HP)には、空気清浄機の技術を含め日本国内で取得された特許情報などが掲載されている。11年度は約1270万件だったアクセス件数は伸び続け、21年度は1億件以上に上った。
政府は利用に支障をきたす恐れがあると判断し、22年度から同一回線からの短時間のアクセス件数に回数制限を導入。23年度は約8775万件まで低下したが、「海外企業からのアクセスは依然として多い」(同庁)。
なかでも中国企業は連日のようにアクセスしHPに掲載された日本の技術を“参考”にした商品開発を活発化しているとみられる。
特許が出願されていない中国で販売するなど「月に数十億円も稼ぐ中国企業が存在する」(知財専門家)という。
久慈はこう語る。
「中国が日本の環境技術を盗用している可能性は極めて高い」
(6)「パクリ天国」中国、特許出願数“世界1位”の実態は…
source : 2013.06.06 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
今からさかのぼること約4年前のことだった。
「気持ちを引き締めて取り締まりにあたる」
中国政府関係者は模倣犯罪の摘発徹底を直訴するために訪中した「国際知的財産保護フォーラム」座長でパナソニック会長だった中村邦夫にこう確約した。
パナソニックは、日本企業として戦後初めて中国に工場進出。中国の近代化に尽力した同社に恩義を感じる中国人は多く、それだけに模倣犯罪の取り締まり強化に期待が高まったが、被害は一向に減らず、逆に増加している。
特許庁が日本企業を対象にした平成24年度の調査で中国の模倣被害は651社と世界最多。日産自動車が過去2年間に中国で押収したエアバッグをはじめ粗悪な模倣部品は300点を超えるなど、最近では消費者の命にかかわる被害まで急増している。
中国に進出する日本企業関係者にとって、忘れられないのが23年夏、中国企業が日本の新幹線の車両技術を奪い、自社技術として米国に売ろうとしたことだ。
中国の国営車両メーカー、南車集団が川崎重工業などが開発した新幹線「はやて」の技術をベースに改造したとみられる高速鉄道車両の特許を米国に申請した。コピー製品にもかかわらず中国側は国産技術と主張。国際常識に外れた違反行為だが川崎重工業は異議申し立てを行わなかった。
「当時、はやての車両技術について川重は米国で特許を取得しておらず、権利を主張できないと判断したようだ」。ある関係者はこう解説する。
パナソニックは知的財産を守るため、特許申請に積極的に取り組んでいる。世界知的所有権機関(WIPO)がまとめた世界の企業などによる24年の国際特許登録の出願件数でパナソニックは2位だった。
出願企業ランキングで首位だったのは中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)。3位のシャープに続き、4位には同じく中国の通信機器大手、華(ファー)為(ウェイ)技術が入った。中国では特許や商標に「先願主義」を採用していることもあり、中国企業は特許や商標の出願に熱心だという。
「模倣大国」として揶揄(やゆ)されてきた中国だが、特許庁によると、同国は24年の特許の出願件数が65万3千件と、「世界一の特許大国」に成長した。米国(54万3千件)や日本(34万3千件)を大きく引き離している。
特許の出願増加に伴い、知財関連の訴訟件数も23年に7819件と世界一を記録した。9年前には人気キャラクター「クレヨンしんちゃん」の類似商品を違法販売する中国のアパレル会社が、権利を管理する出版社の双葉社(東京)との間で商標をめぐる訴訟に発展した。
偽物が本物に対して「あなたは偽物だ」と言い切る厚顔ぶりで、中国は類似品で莫大(ばくだい)な利益を得るだけでなく、オリジナルの商標権まで奪おうとする攻勢を強める。
知的財産権をめぐる「特許戦争」は国と国の戦いでもある。しかし、欧米、さらには中国に比べ、日本政府の対応は不十分だ。
WIPOなどによると、日本の特許出願は国内向けが大半で、23年の約32万6千件の出願のうち海外への出願率は1割に過ぎない。「日米で1つの技術の特許を取得するのに数百万円単位が必要」(関係者)など海外の特許出願には膨大なコストがかかるためで、資金的に余裕のない中小企業はもちろん、大企業もときに二の足を踏むのが現実だ。
日本政府は約5年前から海外に特許申請する中小企業を対象に、年間300万円の補助金制度を導入しているが、1年に複数の特許を出願する企業にとっては十分な額ではない。
米国では約10年前から零細企業に対して出願費用をほぼ全額負担する対策を実施。中国でさえ特許の取得企業への報奨金や法人税のカットなどの政策が充実している。
特許と訴訟の分野で力をつけ始めた中国。「パクリ天国」という裏の顔を持つ知財大国に応戦するため、日本は「過去の常識にとらわれない大胆な改革」(知財専門家)が求められている。
(7)サムスン、転職先の業務内容まで把握していた「まるで情報機関」
source : 2013.06.07 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
日本企業からヘッドハンティングで移籍した韓国・サムスン電子から、中国企業に再転職した日本人技術者にあるメッセージが届いた。昨年秋のことだった。
「あなたは離職時の誓約に違反している。当社(サムスン)に不利益が生じていると判断した場合、あらゆる法的措置を検討する」
サムスンが指摘したのは退職時に一筆取り交わした同業他社への再就職をしないという「競業避止義務規定」だった。この技術者は、半導体の品質管理システムの開発を取りまとめる責任者だった。転職先の中国企業での仕事は半導体の基盤設計の業務管理であり、サムスンでの仕事とは違うと本人は判断したが、サムスンの受け止めは違ったようだ。
「サムスンは転職先の業務内容まで把握している様子だった」
技術者はサムスンの情報流出に対するリスク管理意識の高さを思い知った。
取材の過程で、連絡を取ったサムスンの現役、退職社員は20人近くに上ったが、現役では9割、元社員でも半数が取材の申し入れを断ってきた。
サムスンの系列企業で、半導体開発チームのとりまとめ役として数年働き、今年退社した40代の男性も同様だった。
「取材はご遠慮いただけませんか。再就職に影響が出かねませんので」
サムスンについて話を聞かせてほしいと取材の趣旨を告げると、電話の向こうからはすぐに断りの返事が返ってきた。
男性は日本の私立大学の大学院で電子工学系の修士号を取得し、現在、日本国内と中国、欧州の技術メーカーへの技術開発職を求めて就職活動中だった。
サムスングループの中核企業の1つ、サムスン物産の元常務はこう話す。
「サムスンは知的財産の損失に極めて敏感だ。現役はもちろん退職者の動きも細かく追っている。まるで情報機関のようだ」
技術者を獲得すれば、技術がついてくる-。技術の価値を認識しているからこそ厳しい管理態勢を敷く。
液晶や携帯電話などデジタル家電の日本人技術者を次々と引き抜いていったサムスン。今や韓国の国内総生産(GDP)の2割超に達する巨大エレクトロニクスメーカーにのし上がった。韓国経済の成長と反比例するように、日本の技術者のヘッドハンティングは減りつつある。
(8)「年収460万円」…中国に安く買われる日本の“頭脳”
source : 2013/06/07 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
初夏の日差しを浴び、約1・3ヘクタールの水田はキラキラと輝いていた。JR熊谷駅(埼玉県熊谷市)から東に約1キロ。来年秋、この農地が世界最大の白物家電メーカーの一大拠点に生まれ変わる。中国のハイアールグループが群馬県から研究開発センターを移転するのだ。
「年収例 27歳大卒460万円(残業代込み)」
拠点開設にともないハイアールが求人情報で提示した給与額に、業界関係者の間からはため息が漏れる。
日本企業の平均給与に比べ、決して少ないわけではない。ただ、年収2千万~6千万円という高額で勧誘を受けていた十数年前と比べるとその差は大きい。
「ハイアールのように日本企業と同額か、それ以下の給与でも技術者は集まってくる。こんなに簡単に日本の“頭脳”が中国に流出すると思うと危機感を覚える」。国内電機メーカーの関係者は厳しい表情を浮かべた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「人材流出の決定的な引き金となっているのは人員リストラだ」
東京都内のヘッドハンティング会社の社長はこう指摘する。日本の家電不況に原因があるというわけだ。
パナソニック、シャープは平成25年3月期決算で巨額の連結最終赤字を計上。5年ぶり最終黒字に転換したソニーも、資産売却が利益増加の理由で、主力の家電部門は1344億円の営業赤字だった。
業績不振を理由に、家電各社は今、製造業の“生命線”でもある人員の削減に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれている。
ソニーは、25年3月期に国内外で約1万人を削減。シャープは初めて早期退職を募集し、昨年末に2960人が会社を去ったほか、パナソニックも約3万人の削減を進めている。こうした日本の家電各社の苦境を、中国企業は突いてきているのだ。
前出のヘッドハンティング会社社長は「リストラされたり、現場を離れて5年以上経過している技術者でもいいからと、ハイアールやハイセンスなどの中国企業が猛烈な勢いで人材を雇い始めている」と明かす。
しかも、人材にとどまらず、ハイアールはパナソニック傘下となった三洋電機の白物家電事業を丸ごと100億円前後で買収。サムスンはわずか約103億円でシャープの株式3・04%を取得し、第5位の大株主に躍り出た。日本の家電技術は、確実に外資の手に落ちつつある。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
厳しい状況に追い込まれている日本の家電各社だが、「日の丸再生」のため戻ってきた技術者もいる。この技術者は日本メーカーからサムスンにスカウトされ、55歳で定年退職後、再び日本のメーカーに再就職した。
サムスンでは、スマートフォンなどの高機能携帯端末に不可欠なタッチパネルなどのディスプレー画面に使われる有機EL(エレクトロルミネッセンス)部門にいた。日本で同部門の事業が縮小されたため、当時の年収の1・5倍の収入を約束されサムスンに転職した。
有機ELに関する知識のみならず、日本国内に豊富な人脈を持っていた。サムスン側からは同社と日本の研究機関を結びつける役割を期待された。
そこで待ち受けていたのは「過激な競争に追い込み、脱落者には見向きもしない」という企業文化だった。日本の技術が勝っていると信じていたが、行ってみると製品に求められる技術分野では韓国のほうがはるかに進んでいると感じた。サムスンでは10年近く働いた。
定年を迎えるにあたり、自分の古巣の日本の産業界の現状に目を向けた。この技術者も再生が簡単でないことは理解している。それでもある思いがこみ上げてきたという。
「もう一度、日本の技術で世界を席巻できるよう勝負したい」
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