source : 2013.04.01 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
台湾・台北郊外を流れる淡水河の岸辺で今年2月、1人の老人の死体が発見された。遺体には鋭利な刃物で刺された傷があった。老人の名前は陳進福さん(78)。妻も同時に殺された。3月に入って男女4人が逮捕された。陳さん夫妻の財産をねらった犯行とみられているが、陳さんは日本の島をめぐるトラブルも抱えていたようだ。
日本の公安関係者は「沖縄に土地を所有していた陳さんが中国ともめていたとの話もある」と語る。
地元関係者によると、留学生として来日した陳さんは、日本の大学の非常勤教員などを経て事業をおこした後、沖縄県西表島の南西に位置する外離島(そとばなりしま)や内離島(うちばなりしま)の土地を日本人から購入。
陳さんには香港の実業家が「観光開発したい」と土地の売却を働きかけていたという。台湾の東森テレビ(3月11日電子版)はこの実業家が「大陸(中国)の軍関係者からの指示で購入を図ったともいわれる」と伝えた。尖閣諸島の南に位置する西表島と与那国島との間を中国艦船7隻が航行したのは昨年10月だった。
中国人による沖縄県の土地買収話はこれだけではない。沖縄県が一昨年11月に上海で開いた投資セミナーでは、リゾート開発のほか米軍人向けの賃貸住宅も対象に含まれていた。
沖縄側には中国マネーを当て込み、経済を活性化したいという思惑もあるようだ。水面下では地元財界トップもからみ、主に中国の資本で500億円程度の「日中友好投資ファンド」の立ち上げを目指す動きもある。構想には、カジノリゾートや那覇市内のチャイナタウン設置、中国語テレビの開局も含まれている。
◆棚上げの甘い誘い
「島の領有権をめぐる対立を棚上げして、共同開発と大局維持をしよう」
中国清華大の劉江永教授は、沖縄県内で行われる講演会に何度も足を運び、尖閣問題の棚上げによる日中友好を強調する。
日本各界とつながりを持つ中国国際友好連絡会(友連会)の関係者も頻繁に沖縄を訪れている。中国大使館の福岡総領事は定期的に沖縄県を訪問し、県幹部らと接触を図っている。
平成23年7月から日本政府は沖縄県を訪問する中国の個人観光客を対象に、3年間有効な数次ビザ(1回の滞在期間は90日以内)の発給を開始。これで中国の航空会社の沖縄便参入が相次ぎ、観光客も急増した。
観光とは別の目的で沖縄を訪れる人たちもいるようだ。沖縄には4つのAMラジオ局があるが、夜になると一気に30以上受信が可能になる。主に中国語の放送だが、公安関係者によると番組の中で沖縄にいる中国人や中国と関係のある沖縄県民へのメッセージが含まれることもある。「○○さんお元気ですか」「○○さん、連絡をするように」といった具合だ。
作家の佐藤優氏は沖縄での中国の動きについてこう解説する。
「これまでの指示を与えられて動いたスパイとは違い、ばらばらでもある段階でみなが中国の国益にあわせてスパイとなる。新帝国時代型の新しいインテリジェンスだ」
中国の浸透工作は沖縄だけにとどまらず、日本全体、そして世界へと向いている。
■「CCTV」中国膨張の先兵
沖縄県・尖閣諸島の国有化を受けて中国全土に吹き荒れた反日デモが収束してから約1カ月後の昨年10月下旬のことだった。北京を訪れたイベント会社経営の日本人男性が滞在したホテルの部屋に、CCTV(中国国営中央テレビ)幹部が訪ねてきた。男性は約10年前にCCTVが製作した日本に関する番組に協力したことをきっかけに、この幹部と知り合った。
「私たちの英語チャンネルを日本の主要都市で放送したい。実現すれば大金が入る」
幹部はこう切り出した。英語チャンネルはCCTVが持つ20以上のチャンネルの1つ。日本ではまだ放送されていない24時間ニュース番組を流し、中国政府の視点で国内外の出来事を解説しているのが特徴だ。
反日デモをめぐり日本メディアによる中国批判が強まったなかで、各地のケーブルテレビなどを通じてCCTVの番組を流すことができれば、中国側の見方を日本の視聴者に直接提供できる。こんな思惑が中国側にはあったとみられる。
幹部は「ホテルなどで見られるようにすればいい。一般家庭は無理でも構わない」と述べ、実現すれば中国当局から資金援助が受けられると語った。
男性は日中関係が悪化しているなかで「自分ができるビジネスではない」と判断、丁重に断ったという。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
CCTVは2000年に英語チャンネルを開始したのを皮切りに、04年にスペイン語とフランス語放送、09年にはアラビア語とロシア語の放送も開始。NHK国際放送(テレビ)は英語チャンネルだけだが、CCTVは国連の6つの公用語をすべて網羅している。
外国の都市のケーブルテレビのほか、衛星を通じてテレビ番組を世界中に流している。CCTV関係者は「12億人近い人が見ている世界で最も視聴者数が多いテレビ局」と主張する。
以前は政府から補助金をもらっていたが、広告収入の増加もあり現在は受け取っていないとしている。主な収入源は広告と映像ソフトの販売。現在は240億元(約3600億円)以上と推定され、10年前の2倍以上になっている。
11年の段階で従業員は契約社員を含め1万3000人、海外支局は53カ所。現在はさらに増えている。昨年にはアフリカ(ケニア)と北米に相次いで支社を開設した。同年2月に米国の首都ワシントンで放送を開始したのがCCTVアメリカだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
CCTVアメリカはホワイトハウスまで約1キロ、米議会まで約2キロの距離にある。全面ガラス張りのモダンな建物だが、CCTVの表示はない。キャスターにCBS系列のテレビ局に出演していた白人のマイク・ウォルター氏らを起用するなど、中国色を薄める工夫をしている。
顧問を務めるベテランジャーナリストのジム・ローリー氏によると、スタッフは100人程度。中国人は2割で「給与は米大手ネットワークと遜色がない」という。ローリー氏は「CCTVといえばプロパガンダといわれるが、ステレオタイプで判断しないでほしい。世界的な放送局を目指している」と強調する。
同氏は「報道内容に(中国当局から)規制がかかることもない」と胸を張るが、完全な報道の自由が保障されているとはいえないようだ。ローリー氏は尖閣諸島問題では、ほとんどが中国国内で作成された内容を伝えるとしたうえで、「Senkakuではなく(中国名の)Diaoyuと呼ぶ」と語る。
英語チャンネルでは視聴者を誘導するような報道も時にある。たとえば、尖閣問題での中国の主張を伝えるニュースの前に、北方領土をめぐる日露の対立を紹介する。続けて韓国で起きた慰安婦問題をめぐる反日行動の報道などと合わせて紹介。日本は周辺国との「トラブルメーカー」であると印象づけるのだ。
中国共産党の理論誌『求是』3月号に掲載された国防大教授2人の論文は世論形成強化について「国際競争力を強化するうえで必然の選択」と明記している。
CCTVの海外展開からは、中国政府のソフトパワー戦略の「先兵」としての姿が浮かび上がってくる。
【用語解説】CCTV(中国国営中央テレビ)
1958年に北京テレビとして放送開始、78年に現在の名前に改称された。共産党中央宣伝部の管轄下にある。国内宣伝だけでなく、国際世論上での中国の発言力と影響力を拡大する役割を担う。2007年に胡錦濤前国家主席が「文化のソフトパワーの向上」を掲げ、世界の主要都市での英語チャンネル普及を外交政策の重要課題として取り組んでいる。
(2)中国文化を世界に…南太平洋でも中国語浸透
source : 2013.04.02 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
南太平洋に浮かぶフィジーの首都スバにある南太平洋大学。太平洋地域の12島嶼(とうしょ)国が共同で設立した大学で、同地域の将来を担う優秀な人材が集う。そのキャンパスの中に孔子像が立つ。昨年9月に開校した中国の教育機関「孔子学院」の目印となっている。
「睡覚(シュイジャオ)」(寝る)
「起床(チーチョァン)」(起きる)
冷房が入っているにもかかわらず熱気に満ちた教室からは、中国人教師の声に続けて発音するフィジー人受講生20人の声がこだましていた。
学生向けの中国語授業もあるが、この日は近隣住民が受講できるクラスの日。週1回2時間で17週間のレッスン料は200フィジードル(約1万円)で、「受講希望者は定員の100人を上回る人気ぶり」(大学関係者)だ。
夫婦で受講するジャグ・ラムさん(40)は「仕事の関係で中国本土と香港、台湾に頻繁に出張する。取引相手と中国語で会話をしたいので授業は絶対に休めない」と話す。
「かつてフィジーの人は日本語を学んでいたが、いまは中国語を学んでいる」と話すのは首相府のピコ・ティコンドゥアドゥア次官だ。南太平洋大によると、設立費15万米ドル(約1400万円)は中国がすべて負担している。
2006年の軍事クーデターで、欧米や日本から事実上の制裁措置を受けているフィジーにとって、条件なしで開発目的の援助を行ってくれるのは中国だけだ。現地の支援関係者はこう指摘する。
「孔子学院は長期的な展望を持って、ソフト面でも浸透を図ろうとする中国の戦略の一部だ」
◆取材に「圧力」
孔子学院はCCTV(中国国営中央テレビ)と連携し、各地で中国語のスピーチコンテストを開催している。10年度報告によると、同年は62カ国から10万人が参加した。孔子学院とCCTVは中国のソフトパワー拡大の“車の両輪”となっているわけだ。
フィジーでもCCTVは有料ケーブルで放送されている。運営するフィジー・テレビにCCTVの放送内容について取材したが、対応に出てきた顧問弁護士は「NHK国際放送のほうが内容が素晴らしいから私は好き」とはぐらかすばかり。同テレビ関係者は「フィジー政府と友好関係にある中国への配慮から、日本のメディアからの問い合わせに応じるなという圧力がかかった」と明かす。
放送免許は半年ごとにフィジー政府から更新されるだけに、テレビ局側も自由に動けないようだ。
フィジー情報省が月2回発行する新聞には、中国関係ニュースに特化したページが設けられている。中国からの援助をうけたプロジェクトにからむイベントには国内メディアを駆り出すなど、フィジー政府の対応からは中国への配慮が随所にうかがえる。
◆台湾を手本に
「中国は文化交流を重視してきた台湾のやり方を見習っている。中国と台湾に共通しているのは、宣伝が大事だと認識し、優秀な人材と予算をつけることだ」
米シンクタンクに在籍したことのある東京財団の渡部恒雄上席研究員は中国の手法をこう分析する。
中国のソフトパワー拡大は米シンクタンクでも顕著だ。シンクタンク事情に詳しい米ペンシルベニア大国際関係プログラムのジェームズ・マックガン副所長は、中国関連のプログラムや使節団員の訪問数の増加など「皮膚感覚として(ワシントンでの)中国人の増加は間違いない」と語る。
シンクタンクでは人脈の構築だけでなく、米政府の政策決定プロセスや人事情報、米議会に影響力のある専門家の特定など生きた情報として入手できる利点がある。もっとも、ソフト路線一辺倒ではないようだ。
最近では中国が発信源とみられるシンクタンクへのハッカー攻撃も多発している。米メディアによると閣僚経験者などの有力者が会員に名を連ねる外交問題評議会などが標的となった。
マックガン氏は「米国の研究者には中国への懐疑心と慎重さが求められる」と警鐘を鳴らすのだが…。
【用語解説】孔子学院
中国語や中国文化を世界に浸透させるため、中国政府が各国の大学などと連携して設立する非営利の教育組織。104の国と地域に孔子学院が353、より小規模の孔子教室が473設立された(2011年8月時点)。日本には12校設置されている。
(3)中国のデマ、日本孤立を狙う…「田中上奏文」の悪夢再び
source : 2013.04.03 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
「第二次大戦勝利で得た成果と戦後秩序を守らなければならない」。ロシアを訪問した中国の習近平国家主席は3月23日、いつもの表現で日本を非難した。昨年9月、パネッタ前米国防長官に「日本が反ファシズム戦争勝利の成果を否定、戦後秩序を覆そうとしている」と発言して以来、日本批判を繰り返している。
中国は日本政府による尖閣諸島国有化を「戦後秩序に対する著しい挑戦」と位置づけ、「戦勝国」米中露が手をくみ倒した「ファシスト」が再侵略に動き始めたと国際社会に訴えているのだ。ファシストとは一般に民主主義を否定する全体主義者を指すが、日本の指導者にそんな人物はいない。対日非難は事実を捏造(ねつぞう)したデマだが、中国はデマを承知で国際社会に発信している。
ジャーナリストの富坂聡氏は「これこそ中国が仕掛ける『宣伝戦』だ。日本にファシストが復活していようがいまいが関係ない。キーワードを連呼し国際世論をあおる。狙いは日米分断と日本孤立だ」と指摘する。
◆反日宣伝に利用
中国の「宣伝工作」は今に始まったわけではない。
昭和の初め、世界中を駆け巡った怪文書「田中上奏文」もそうだ。
昭和2年、当時の田中義一首相が昭和天皇へ極秘に行ったとされる上奏文には、世界征服の手始めとして満蒙進出と中国侵略の手順が記述され、日本を世界征服をたくらんでいる国として印象付けさせた。
矛盾や誤りが多い、この文書には、日本語の原典が存在せず、当初から日本では、偽書とみなされていた。しかし、中国は田中義一が死去した昭和4年ごろから巧みに「反日」宣伝に利用したのである。
10種類の中国語版が出版され、組織的に大陸各地で流布されたほか、英語版「タナカ・メモリアル」が昭和6(1931)年、上海の英語雑誌『チャイナ・クリティク』に掲載され、同誌から転載された小冊子がアメリカ、欧州、東南アジアに配布された。
ソ連に本部のあるコミンテルンも同年、雑誌『コミュニスト・インターナショナル』に全文掲載し、ロシア語、ドイツ語、フランス語で発行。「世界征服を目指す日本」とのイメージを広めた。
満州事変後の昭和7年、中国はジュネーブで開催された国際連盟理事会で「田中上奏文」を持ち出し、そのシナリオ通りに満州で侵略が起きていると訴えた。
日本の首席代表、松岡洋右は「田中上奏文」が偽物であり、本物である証拠を提出するよう求めた。中国代表の顧維鈞は、「田中上奏文」にある政策は、日本が進めてきた現実の政策そのままであると主張。そして「自国のみならず世界の問題」と論じた。
中国は日本が世界征服をもくろんでいると強調することで、国際世論に日本の不当性を訴えたのである。
松岡が真贋(しんがん)論争に持ち込んだため、逆に中国の巧みな宣伝により、大陸での日本軍の行動がクローズアップされた。世界はわかりやすい言葉に反応し流れを作る。論戦を制した中国は各国の支持を得たが、日本は常任理事国の地位を捨て国際連盟を脱退。孤立への道を余儀なくされる。やがて日中戦争から太平洋戦争に突入する。
◆偽書と認識
『日中歴史認識』(服部龍二著)によると、日本外務省は満州事変前から中国国民政府外交部に「田中上奏文」が事実無根として取り締まりを要請。これに応じて中国は昭和5(1930)年4月12日、機関紙『中央日報』で「田中上奏文」の誤りを報じている。中国は当初から「田中上奏文」を偽書と認識しながら「宣伝戦」を展開、国際社会はそれを信じたのである。
手嶋龍一慶応義塾大学大学院教授(インテリジェンス論)は「田中上奏文は中国側の贋作だが、日本側の機密文書も織り込んだ実に巧みな工作だった」と指摘。その上で「いま反ファシズム戦争を戦った国々を糾合しようと尖閣カードを使って宣伝戦を仕掛けている。これに対抗するには、戦後の日本が光り輝く民主主義国であることを示し、同じ価値観を分かち合う米豪印と結束を固める新たな外交戦略を打ち出すべきだ」と強調する。
【用語解説】田中上奏文
昭和2年、日本政府が対中政策を検討した「東方会議」を受け、田中義一首相が天皇に上奏したとされる文書。中国語で大陸における政策が具体的に記されている。英語版「タナカ・メモリアル」には日本が最終的に米国を侵略すると書かれていたため、米国で強い反発を呼んだ。現在では国際的にも偽書であることが定説になっている。
(4)韓国、官民挙げて「慰安婦」工作…中国と共闘の動きも
source : 2013.04.04 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
ソウル中心部にある在韓国日本大使館前に1月末、若い韓国人の男女が集まった。彼らは大使館前に違法に設置されている日本統治時代の「慰安婦」の像を囲み、笑顔で記念撮影した。
元慰安婦の少女時代を題材にしたというブロンズ像は、大使館前で毎週集会を続ける強硬な反日団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」が2011年12月に建てた。
男女は次世代の国際社会を担うリーダーを生み出すために設立された世界最大規模の学生NPO(民間非営利団体)「アイセック(AIESEC)」に所属する学生たち。ソウル大や梨花女子大などの名門大の学生も含まれている。
学生たちは1月29、30両日には慰安婦問題に関する討論合宿をソウルで主催した。慰安婦問題は「日本が犯した戦争犯罪」という韓国側の論理を世界に広げようとするのが目的だ。高い英語力を持つ学生も多く、他国の若者とも頻繁に討論会などを開いている。
学生らの活動は自発的とはいえ、韓国政府が財政あるいは宣伝面でバックアップすることが多い。今回も韓国の政府機関が発行する媒体の誌面を割いて活動を支援した。
◆「財団」政府と直結
学生たちの活動を支援する団体がソウル市内にある。「東北アジア歴史財団」で06年に発足した。名称こそ「財団」だが韓国政府と直結している組織だ。理事長は閣僚級の扱いで、ナンバー2には歴代外務省から派遣された次官級幹部が就任している。「東海」や「独島」など「国際表記名称」の変更と定着を担当する大使級の外交官もいる。
財団は活動目的の第一に「日本軍『慰安婦』の研究と国際問題化」を挙げ、「発足当初から慰安婦問題を主要な歴史懸案として認識し解決のために努力してきた」としている。
3つある研究室の1つで慰安婦問題、もう1つで日本との領土領海関係を扱う。
内外の市民団体の取り込みを担う交流広報室や、歴史問題への対応を練る戦略企画室もある。
財団の内部資料によると傘下の「独島研究所」の研究員や契約職を含む財団の全体の人員は約100人。13年の予算は210億ウォン(約18億円)に上る。
07年には韓国の近現代史の学会とともにインドネシアや台湾などで「慰安婦実態調査」などを実施した。
挺対協にも、行事への財政支援を07年以降5回以上行っている。
長く慰安婦問題を担当した日本政府関係者は財団について「韓国の国際世論工作拠点といっても過言ではない」と指摘する。
◆安倍首相狙い撃ち
6月に英領北アイルランドで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)では、「戦場における女性」がテーマとなっている。
この場で慰安婦問題が議論される可能性が指摘されている。日本の政府・与党内には「日本の取り組みを説明する好機」ととらえる向きもあるが、欧米メディアに向けて慰安婦問題で安倍晋三首相を標的にした働きかけはすでに始まっている。
■票目当て なびく地元議員
「Abeを信用できますか?」
2月下旬の安倍晋三首相の訪米直前、日本を担当する外国メディアの記者たちに、こんな書き出しのメールが届いた。発信元はワシントンに拠点を置くシンクタンクで、主宰者は慰安婦問題で日本の責任を執拗(しつよう)に追及してきたミンディ・カトラー氏だ。
日米関係に関する分析やコメントを提供できると売り込むメールはこう続く。
「安倍首相はワシントンで信用されていない。彼は米国との同盟関係の深化を誓うが、日本の平和憲法と第二次大戦の歴史を修正しようとする願望で、その誓いの誠実さと実効性に疑問が生まれている」
メールはさらに、安倍首相や閣僚らが野党時代、米ニュージャージー州の新聞に出された慰安婦に関する抗議広告に署名していることや、ある閣僚の家系が戦争捕虜を強制労働に従事させたことなどを列記する。
メールと前後し、米外交誌フォーリン・ポリシー(ネット版)は、慰安婦問題で日本政府はもっと行動すべきだとする内容の記事を掲載した。その中で引用されたコメントの一つがカトラー氏だった。
メールを受けた外国人記者の一人は、「慰安婦問題はソウルで動きが多くあるだけに報道される量も多くなる」と語る。
事情を把握していない外国人記者が「慰安婦問題のエキスパート」として紹介されたカトラー氏にコメントを求めることは想像に難くない。
◆米20カ所に碑
米国をはじめ台湾、欧州連合(EU)、カナダなど各地で慰安婦問題を非難する決議が採択されている。米国ではこのほか、3月にニュージャージー州バーゲン郡で慰安婦碑が建てられた。同種の碑はすでに同州パリセイズパーク市、ニューヨーク市近郊にもあり、今後、国内約20カ所に建つ見込みだ。
米国内での決議や碑の建立は、移民として地域社会に根を下ろす「ニューヨーク韓人会」や「韓米公共問題委員会」「韓国系米国人権利向上協会」など複数の韓国系団体が、地元議員らに強く働き掛けて実現したものだ。
いずれの団体も取材を拒否したが、唯一立ち話に応じた同協会のドンチャン・キム代表(46)は、「日本政府は謝罪し、若い世代にも事実をきちんと伝えるべきだ。私たちは新たな世界を築きたいのであり、決して『反日本政府』ではない」と強調した。
慰安婦問題に詳しい専門家はこれらの団体が慰安婦問題に熱心な理由について「日本統治時代に苦しんだ親を持つ世代が中心だ。祖国と自分を切り離さないためにも(日本批判をすることで)気持ちのバランスを取ろうとしている」と説明する。同時に「祖国から“戦士”として尊敬してほしいとの気持ちもあるようだ」との指摘もある。
ニューヨーク州やニュージャージー州は韓国系住民が多い。パリセイズパーク市の韓国系住民の数は全体の52%。バーゲン郡でも1990年以降、韓国系住民が約4倍の8%へと急増している。決議や碑の建立は選挙に向けてのパフォーマンスという側面もある。
◆中国と共闘も
議員への韓国系団体による攻勢には足元からも批判が出ている。ニューヨーク州議会議員候補(共和党)で韓国系の米国人女性、サニー・ハン氏は「日本や韓国の70年前の問題を全く関係のない米国でなぜ持ち出すのか」と疑問を呈す。韓国系の若い世代の間でも「日本への挑発は不健全」との声が上がる。ただ「表立って口に出せる雰囲気ではない」(ハン氏)のも事実のようだ。
ニューヨーク州では韓国系だけでなく中国系の住民も増えており、“中韓共闘”の動きも出ている。
韓国系団体は中国系ニューヨーク市議のピーター・クー氏(民主党)に働き掛け、同市クイーンズ区にある韓国系住民の多い地区を通る道路の名称を「慰安婦メモリアル通り」に変更する計画を進めている。同地区での中国系と韓国系住民の反目は有名だが、当選を確実にしたいクー氏は韓国票を当て込んでか変更に合意したという。
慰安婦問題におけるウソを指摘し続けてきた東京基督教大の西岡力教授はこう強調する。
「日本政府には世界の国々に権力による強制連行はなかったと堂々と主張し、誤解を解くための官民挙げての広報戦の取り組みが必要だ」
(5)沖縄の新聞、中国大使に同調 外務官僚が反撃も…出遅れた日本
source : 2013.04.05 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
沖縄の琉球新報は4日付の社説で、程永華駐日中国大使が2日に同紙の単独インタビューに応じ、日中関係を「正常な軌道、本来の安定・発展した軌道に戻すべきだ」と述べたと紹介した。そのうえで「緊張緩和は沖縄にとってこそ切実な課題である。主張の差異は差異として認識しつつ、関係自体は『本来』の友好的『軌道』に戻すべきだ」と大使の主張に同調した。
程大使が沖縄の新聞を選んでインタビューに応じた効果がすぐに出たようだ。
◆外務官僚の反撃
日本側も遅まきながら「世論戦」を始めた。2月3日、香港のフェニックステレビに一人の官僚が出演し、沖縄・尖閣諸島をめぐり中国側出演者と激論を交わした。討論番組「寰宇(かんう)(世界)大戦略」に出演したのは、外務省中国・モンゴル第1課の石川浩司課長。流暢(りゅうちょう)な中国語で詰め寄った。
「中国側は自らの立場に自信があるのなら、国際司法裁判所になぜ提訴しないのか!」
中国側が自らに不利な提訴には及び腰であることを見透かしての挑発だ。中国側の香港・嶺南大学アジア太平洋研究センター長の張泊匯(ちょうはくかい)氏は、「中国の主権問題は歴史的に第三者の手に委ねられたことなどない」といつもの中国の公式見解を述べるにとどまった。
番組サイトには石川氏への批判が集まる一方、「なぜ中国の官僚を討論に出さなかったのか」「日本の官僚に議論で負けそうになった」と、石川氏に軍配を上げた視聴者も少なくなかった。
中国当局の意向を色濃く反映するフェニックスは昨年8月に尖閣に上陸した抗議船に記者を同乗させ中継も行った。ただ、公式見解を繰り返すだけの中国官製メディアとは異なる。中国本土でも推定2億人の視聴者がいるとされ、指導層にも影響力を持つ。そこに外務省は目を付けた。
石川氏は出演の意図をこう説明する。
「誤解に基づく対日感情の悪化を防ぎ、尖閣に関する客観的な情報や日本側の見方を中国に発信することは重要だ。リスクを取らなければ前進もできない」
もっとも、こうした取り組みは緒に就いたばかりだ。
◆一歩先行く韓国
「ヘリをチャーターして独島(竹島の韓国名)に行きますが、同行しますか」
韓国外務省は昨年10月、外国人記者をこんな言葉で誘い、島根県竹島に上陸させた。参加した米紙ワシントン・ポストのチコ・ハーラン東アジア総局長は、「韓国政府は見逃せないネタをくれる」と話す。
韓国は全省挙げて、英語に堪能な官僚を使って積極的に記者との接触を図ってくるという。ハーラン氏によると、韓国は大統領さえもが外国人記者とオフレコ懇談に応じる。
日本在勤歴計18年のボイス・オブ・アメリカ(VOA)のスティーブ・ハーマン北東アジア支局長も「日本ではわずか数分の取材でも懇願しないといけないが、韓国での人脈の90%は先方からのアプローチだ」と語る。日本政府からほぼ毎週のように竹島に関する政府の立場を説明した文書がメールで送られてくるというハーラン氏はこう皮肉る。
「日本の外務省は大量のペーパーを書くことで広報しようと決めたようだ。学者なら関心を持つかもしれないけど…」
■中韓攻勢 宣伝戦に出遅れ
中国艦船によるレーダー照射事件が発表された翌日の2月6日、東京・永田町の自民党本部で開かれた外交・国防合同部会。外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長は、こう自己批判した。
「宣伝戦に負けている。外務省としてもそういう反省は強く持っている」
レーダー照射は初めてではなかったが、隠蔽(いんぺい)されてきた。政府が公表に踏み切ったのは、中国の宣伝攻勢を牽制(けんせい)する狙いもあった。
尖閣諸島について、外務省は「領土問題は存在しないとしている以上、積極的広報はできない」(外務省広報文化外交戦略課)との立場だったが、尖閣国有化以降の中国との対立激化を受け、方針を転換した。
ホームページで尖閣問題を解説する「Q&A」も16問に増やした。中国側の主張を紹介した上で「国際法上有効な論拠は示されていません」と反論している。
それでも積極的な宣伝戦を展開することに省内の抵抗は根強い。若林健太外務政務官は「(中国などと)同じ土俵に乗っかるのが得策とは思えない」と語る。
◆予算削減が打撃
予算上の問題もある。外務省の広報文化交流予算は平成13年度は335億円だったが、24年度は194億円まで削減された。民主党政権下の事業仕分けなど、政治からの歳出削減要求を受けてのことだが、ある外務省幹部は「これでは竹やりで戦えと言われているようなものだ」と嘆息する。
「領土や主権といった問題は国の基本の問題。しっかり世界に発信していく」
NHKの25年度予算を審議する3月21日の衆院予算委員会。新藤義孝総務相はNHKの国際放送の役割をこう強調した。
NHKは国際放送「NHKワールドTV」の24時間完全英語化を21年2月に開始。現在は約130の国・地域で計約2億5千万世帯が視聴可能だ。NHKの「国際番組基準」では国内向け放送と異なる基本方針を設定。「解説・論調は公正な批判と見解のもとにわが国の立場を鮮明にする」「わが国の世論を正しく反映する」としている。
ただ、CCTV(中国国営中央テレビ)が尖閣問題や歴史認識について中国の主張を一方的に放送するのに対し、NHKワールドTVは利害が対立する国の主張も紹介する「客観報道」の立場をとっている。
NHKの冷水仁彦(しみず・よしひこ)理事は「日本の主張だけ紹介しても各国の人は興味を示さない。われわれの調査では各国でNHKの信頼性はCCTVを大きく上回っているのです」と強調する。
◆伸びない発信力
とはいえ、米国や英国での認知度は9~13%(23年度)にすぎない。「各国の国際放送がしのぎを削る中でわれわれは後発。浸透させるのには時間がかかる」(冷水氏)と苦戦を強いられているのが実情だ。
19年7月には米ワシントンのケーブルテレビでNHKワールドTVを放映する配信料約20万ドルが国の予算から支出されたが、21年末で打ち切られた。22年1月からはNHK予算で配信料を支払っており、国際発信力強化をうたう政府の方針は、現実の政策に反映されているとは言い難い。
こうした資金難を見越して、20年4月に設立されたのがNHK子会社「日本国際放送(JIB)」だ。主要民放各社や日本マイクロソフトも出資、“オールジャパン”で番組を制作し、NHKワールドTVで放送している。同社は当初、スポンサーからのCM収入で5年後に独立する予定だったが、まだ独立の見通しは立っていない。総収入に占める広告収入の割合は23年度で7%以下。番組自体も毎週金曜日の30分間に限られており、出資企業からは「当初狙っていたレベルとはいえない」(商社幹部)との不満が漏れる。
各国、なかでも中国や韓国が急速に力を入れている世界のプロパガンダ戦争。日本は明らかに後塵(こうじん)を拝している。それが世界における日本の立場を弱体化させている要因のひとつなのだ。
0 Comments :
View Comments :: Click!!
0 Comments :
Post a Comment :: Click!!
コメントを投稿