source : 2011.11.29 The Liberty web (ボタンクリックで引用記事が開閉)
「死に金」という言葉がある。最近の政府や日銀のお金の使い方を見ると、この言葉を思い出す。
とりわけ残念だったのは円高対策に使ったお金だ。
今年に入ってから、政府が行った為替介入は3回。
1回目は、東日本大震災の直後の3月18日。1ドル76円25銭と戦後最高値(当時)を更新したことを受けての介入で、10年ぶりの欧米との協調介入となったが、金額は約7000億円にとどまった。
2回目は、8月1日に4・5兆円規模で介入したが、単独介入だったこともあって、半月後にはあっさり最高値を更新してしまった。
3回目は、10月31日で、介入額は過去最高となる8兆円規模。巨額の介入だったこともあって、75円台まで上がっていた円が、一気に79円台まで下がった。
しかし、11月10日現在、為替は77円前後で推移しており、結局、円高に向かいつつある。
要するに1年かけて円高を止めようと、10数兆円使ったが、ほとんど効果がなかったわけだ。まさに「死に金」である。
■なぜか円を供給しない日銀
為替の変動要因はいくつかあるが、基本的に日銀が円をたくさん供給すれば円は安くなるが、供給を減らせば円は高くなる。円高になっているということは、日銀がお金を供給していないことを意味する。また、一方でドルはたくさん供給されていることになる。
中央銀行がお金を供給すれば、その分、バランスシートが増えるから、その増え方を比べれば、日米の供給量の差が明らかになる。
2008年のリーマンショック以降、アメリカの中央銀行であるFRBは2年間でバランスシートを約3倍に増やしているのに対し、日銀はわずか1・2倍程度だ。
これでは、円高になるのは当たり前だ。中途半端な介入を繰り返しても、円高は止められず、70円に向かっていくだろう。従って10兆円はドブに捨てたようなものだ。
円高を止めたいなら、もう一段の金融緩和をして、円の供給量を大胆に増やさなければならない。今は、復興でいくらでもお金が必要であり、復興債を発行して日銀が買えば、円高に歯止めもかかり、復興財源も得られる。この方がお金は生きる。
■中国との金融戦争を勝ち抜くために
10兆円もの資金を効きもしない介入に使うなら、ギリシャに直接貸すべきだろう。
10兆円ということは、1ユーロ107円で換算すると、934億ユーロの融資ということになる。
なにせ、今ギリシャ支援では、第6弾融資の80億ユーロを実施するかどうかでもめているのだ。そこに突如、1000億ユーロ規模の融資が日本から実施されれば、どれほどのインパクトがあるか。
これは昨年合意したギリシャ第1次支援1100億ユーロに迫る数字なのである。しかも、この第1次支援は、ユーロ圏17カ国とIMF(国際通貨基金)がよってたかって積み上げた数字だ。さらに第2次支援として合意した1090億ユーロを丸ごと不要にしてしまう数字でもある。これを日本一国でポンと出してしまうのだ。
ギリシャ危機を止めて見せれば、日本の国際信用力は一気に高まるだろう。
08年にサブプライムショックで世界に激震が走った時に、当時の麻生政権がIMFにポンと10兆円を出して世界同時恐慌を未然に防いだことがあった。この緊急融資がどれほど国際社会で信用を高めたか。「まさかの友は真の友」であり、EUに貸しをつくっておいて損はない。
一方で、中国は「ギリシャからの輸入を拡大し、ギリシャのインフラ整備への中国企業の参加を支援する」との声明を出して、ギリシャ支援をアピールしている。EUもチャイナマネーに頼ろうとしている。しかし、その輸入規模は8500億円(80億ユーロ)程度だ。
日本の10兆円融資は、中国との金融戦争という観点からも、意味が大きいし、効果的だ。来たる対中国防衛を考える上でも、ギリシャ支援は「生き金」になるはずだ。
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