2016/03/14

【酒井充の野党ウオッチ】2・21高校生安保法反対デモの実態はこうだ! 裏で操るオトナの存在をひた隠すメディアって一体何なの?

 source : 2016.03.14 産経ニュース (クリックで引用記事開閉)



















ある程度予想していたとはいえ、2月22日付の毎日新聞と東京新聞を読んで、愕然とした。高校生らが21日に都内などで行った安全保障関連法の廃止を求めるデモを伝える記事だ。1面で写真入りで報じた両紙は安保法制反対のプラカードを持った若者の姿を伝えた。だが、若者のすぐ隣にいたはずの大人は全く写らず、「いなかった」かのような演出がされていたのだ。

1面トップで報じた東京新聞の見出しは「高校生の声」「私たちも主権者。安保法反対」で、毎日新聞は「『声上げたい』高校生ら反安保法デモ」だった。これを読んだ人は、「多くの高校生が安保関連法に反対するデモに参加した」と受け止めるだろう。「高校生がデモ」は事実だが、実態を反映した記事ではない。以下、共産党や民主党などの野党の主張そのままのデモを同僚記者と取材した内容をまとめてみた。

日曜日だった2月21日に全国各地で行われたデモは、高校生グループ「T-nsSOWL」(ティーンズソウル)が主催した。東京・渋谷周辺では午後4時半から約1時間のデモ行進があった。

現地で実際にデモに参加した人数を目視で数えると、せいぜい600人程度だった。何を根拠にしているか不明だが、主催者発表の約5000人には遠く及ばない。明らかに高校生とみられる人はデモの先頭に集中し、十数人程度だった。大学生らしき若者を含めても二十数人で、あとは中高年層の姿が目立った。先頭付近に集中していた若者は熱気にあふれていたが、行進の途中からは気だるそうにだらだら歩く人たちの姿が多く見られた。

先頭で主に「安保法制に反対します」との横断幕を持って行進していたのは若者2、3人と、山口二郎法政大教授、佐藤学東大名誉教授だった。大音量の音楽を流してデモを先導する車の中では、若者がマイクを握ってラップ調でコールを叫んでいた。聞こえてきたコールは次の通り。

戦争反対/憲法守れ/集団的自衛権はいらない/選挙に行こうよ/賛成議員は落選させよう/安倍はやめろ/安倍晋三から憲法守れ/安倍晋三から日本を守れ/戦争したがる総理はいらない/憲法読めない総理はいらない/安保法制絶対反対

安倍晋三首相を呼び捨てにすることを若気の至りとでも思っているのだろうか。何よりも一緒に参加した大人は誰もこれをいさめず、むしろ、ほほえましそうに眺めていた。それもそのはず。山口氏自身も別の集会で「安倍をたたき斬ってやる」と宣言した御仁だ。佐藤氏は教育学が専門だそうだが、今の教育現場では「首相は悪人だから呼び捨てにしていい」と教えているのだろうか。

主義や主張は自由だが、「戦争したがる総理」「憲法読めない総理」とはあまりにも幼い理解だ。高校生だからやむを得ないと思いきや、大学教授の発言もだいたい同じレベルだった。

山口氏はデモの途中でマイクを握り、開口一番、「高校生の皆さん、本当に今日はありがとう」と謝辞を述べた。「こんな情けない日本をつくったことについて私や佐藤さんの世代は本当は責任をとらなきゃいけない」「なんでこんな日本をつくったんだとみんなに糾弾されても仕方ない」とも語った。「情けない日本」なのかどうかは知らないが、責任をとるというならぜひとってほしい。

山口氏は「今の安倍政権の本質」として、「今この瞬間のことしか考えない」と断言した。山口氏によれば、首相は「5年先、10年先、20年先はどうでもいい」と考えているとのことで、「若者を使い捨て、日本の社会からドンドン未来も活力もなくなっていく」のだそうだ。根拠は全く不明で、これで高校生が共感するのだろうか。

61歳の安倍首相より4歳年下の山口氏は「人生があと10年しかないような年寄りが若者の未来を決めてはいけない。若者の未来は若者自身が決めなければいけない。それが本当の民主主義だ」とも訴えた。ならばご自身もさっさと退場すればいいのに、「皆さんと一緒に私たちも声をあわせて日本の平和と民主主義を守るために戦い抜いていきたい」のだという。若者の行動に興奮したのか。自分で何を言っているのか分かっていないのだろう。

次にマイクを握った佐藤氏は郷愁を隠そうともしなかった。佐藤氏も若者に感謝の言葉を述べた後、「私も最初にデモに参加したのは高校2年生のときだった。ベトナム戦争に反対するために、いても立ってもいられず参加した。当時は高校生の政治活動は禁止されていたため、隠れるように参加したことを覚えている」と感慨深そうに語った。

「高校生の政治活動は自由だ」と訴えた佐藤氏は、1989年に国連で採択され、その後、日本政府も批准した「子どもの権利条約」を挙げ、「条約には子供たちの意見表明権が認められている」と述べた。国連憲章が明確に認めている集団的自衛権には反対するという都合の良い二枚舌だ。

佐藤氏は「あらゆる戦争で被害を受けるのは子供たちと若者たちだ。私たちはこのような安倍政治を次の世代の子供たち、若者たちに渡すわけにはいかない。安保法制を完全に廃止に追い込むまで、ともに戦い抜こう」と訴えた。山口、佐藤両氏は夏の参院選で野党共闘を呼び掛けている市民団体系の組織「市民連合」の中心メンバーだ。高校生を野党応援の活動に利用し、野党共闘を後押ししようとの思惑があるのは明らかだった。

最後にスピーチを述べたのは、高校生の「あいね」さんだった。「まだまだ安保法制反対の声を上げていくべきだと思う」と呼び掛けたあいねさんは「私はこれからもデモに行く」と宣言した。根拠も示さずに「可決されたからといって、安保法制の危険さや違憲な点は何も変わっていない」と断言したが、高校生にいちいち反論しても仕方ないので割愛する。

以上が「高校生が主催したとはいえ、参加者のほとんどが大人で、根拠不明の都合の良い解釈と口汚い言葉が飛び交い、野党を応援した2月21日のデモ」の実態だ。ところが、産経新聞以外のメディアの手にかかると、大人は登場せず、首相を呼び捨てにしたことも伝えず、「高校生の純真な叫び」のように報じられるから不思議だ。以下、各紙の報道ぶりを検証する。

■東京新聞

東京新聞は1面と社会面で大展開した。1面には仙台、名古屋のデモの写真も掲載。近くには同じ日に国会周辺で行われた米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する集会も写真入りで報じ、「辺野古阻止も列島響く」との見出しで関連づけた。

渋谷のデモ行進の記事を読むと、主催者発表として約5000人の「中高生ら」が参加したと報じた。「ら」とは記述しているが、大多数が大人だったことは一切触れていない。あいねさんの発言は紹介する一方、社会面の記事も含め山口、佐藤両氏ら大人はまるでいなかったかのような印象を与える。

■毎日新聞

1面で報じた毎日新聞は「数十人の高校生のほか家族連れや高齢者ら」とし、東京新聞と比べれば実態に近い記述になっている。しかし、写真にも記事にも山口氏ら大人は登場せず、口汚いコールが続いたことには触れていない。参加者数も主催者発表として約5000人とした。

インターネット版の記事では渋谷のデモの写真を8枚掲載している。佐藤氏がちらりと写った写真や高齢者の男性をアップにした写真もあったが、やはり大半は、目視で参加者の1割以下だった高校生らしき若者中心の写真だった。

■朝日新聞

朝日新聞も1面に写真入りで「届け10代の声」との記事を掲載した。こちらは山口、佐藤両氏もしっかり写っている。「高校生らに大人も加わり」と表記し、実態に近い。だが、社会面の記事も含め、参加者の支離滅裂な発言は紹介しなかった。

■共同通信

共同通信はデモ当日の2月21日に記事を配信した。共同も主催者発表として約5000人が参加し、「高校生ら」が声を上げたと報じたが、記事の中で大人はどこにも登場しない。

■産経新聞

産経新聞は政治面で「高校生デモ 中高年も」との見出しで短く報じた。写真は山口、佐藤両氏も映り込んだ先頭集団を“素直に”撮影したものを掲載した。「安倍晋三から日本を守れ」などのコールを上げていたことを紹介し、参院選で野党を支援する山口氏の発言を紹介。参加者に中高年層が目立ったことも書いた。

日経は報じなかった。読売、高校生がデモを行ったからといって報じないことも一つの見識だ。だが、東京や毎日、朝日が実態を反映しない記事を掲載し、それを読んで誤解する人が出ることが予想されたため、産経はあえて取材し、できるだけ実態に即した記事を掲載した。それもメディアの役割の一つだと自負しているからだ。

予想通りだった東京、毎日、朝日の記事は、やはり実態を正確に反映していなかった。ましてや「大人」を外した写真を掲載すれば、「高校生だけによるデモ」との誤った印象を与えかねない。意図的にそうしたのは明らかだ。大人がたくさんいたことや、品性のないコールをしていたことを記事にすることは都合が悪かったのだろう。

野党や朝日新聞などの一部のメディアは、政治的公平性を定めた放送法違反を繰り返した放送局の「電波停止」の可能性に言及した高市早苗総務相を批判している。民主党政権時代も含めた法令解釈を述べただけの高市氏への難癖でしかないが、高校生デモの記事のように意図的に情報操作を行い、都合良く実態をゆがめて伝えるメディアこそ、戦前の大本営発表の反省を生かしていないのではないだろうか。

写真のトリミングという古びた手法によるプロバガンダで世論を都合良く誘導しようとしても、インターネット時代の現代では不可能に近い。現に渋谷のデモを目撃した人はツイッターやフェイスブックで「大人ばかりだった」などと拡散している。安倍政権を倒し、野党を応援したくて仕方ない気持ちは分かるが、勢いあまって自分で自分の首を絞める行為はやめたほうがいい。


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