2016/02/16

【アップル vs 島野製作所訴訟】巨人に立ち向かった日本の下町メーカーの意地 他の中小企業にも光明

 source : 2016.02.16 産経ニュース (クリックで引用記事開閉)







アップルとの訴訟で「最大の争点」(島野側の弁護士)だった国際裁判管轄について島野製作所の主張が認められた。時価総額で世界最大級の“巨人”アップルを提訴した“下町のメーカー”の決断と東京地裁の画期的な中間判決は、高い技術力を持ちながらも海外の大企業の論理に抑えられてきた他の日本企業に光明をもたらしそうだ。

「ようやく一歩踏み出せた。法廷の中で当社の主張を続けていきたい」

島野の船木幸城社長は15日、中間判決の内容にこう感想を述べ、今後も続く裁判に向けて、改めて気を引き締めた。

島野がそれまでの半額以下への値下げ要求やリベートと同様に許せなかったのは、アップルがある「約束」を破ったことだった。

両社は、島野の下請けにあたる2次サプライヤーとアップルが直接取引する場合には島野に知らせることで合意していたという。島野がピンをつくるために2次サプライヤーに伝えたノウハウを使われては、技術の独自性を維持できないからだ。この約束は、巨大企業と取引するにあたり、自社や取引先を守るための中小企業の知恵だった。

しかしアップルは、島野に知らせずに、同社の2次サプライヤーである海外企業にピンそのものを造らせていた。

「このようなアンフェアには、どうしてもノーと言わなければならない」。船木社長ら島野幹部は、“巨人”と争ってでも、培った技術を守る「プライド」を優先した。

国際裁判管轄をめぐっては、平成18年の取引開始から数年後、アップル側が用意した契約書に「紛争の際は米国の裁判所で解決する」との文言があった。島野は、他の海外大手が管轄裁判所を自国内に指定してきたときは難色を示し、協議の末に第三国に変更した。しかしアップルに対しては、同社向けの部品量産のため、設備投資を終えた後でサインせざるを得なかったという。

日本企業にとって、海外での訴訟は心理的な障壁が高く、特に中小企業にとっては費用が経営の重荷になりかねない。管轄裁判所について、大口顧客として優位な立場にある発注元の意向に従う下請けは多いとみられるが、今回の中間判決により、国内の裁判所で正当な権利を主張できるケースが出てきそうだ。

ただ、独禁法違反や特許権侵害の民事訴訟は審理中であり、島野とアップルの訴訟はこれからが本番といえる。


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