2015/10/18

【小坪慎也】左翼の資金源はアレだった!? 官公労に巣食う「専従活動家」の真実

 source : 2015.10.16 iRONNA (クリックで引用記事開閉)




左翼が働いていない理由、それは誰もがなかなか口にできず、しかし不思議に思っていた点だろう。ここで声を大にして言いたい、保守系活動家として前線に身を置いてきた者として「左翼の活動家は仕事をしていない」例も、多々見受けられたという事実を。リアルにおいて、保守派は劣勢となってしまっている。ネット保守論壇の人間が受け入れたがらない現実だが、その謎を解く鍵がある。

左派は、専従活動家を多くもつ。これはイデオロギーに拠らず、事実として認識して頂ける点だろう。専従とは、政治活動のみで生計を立てている者のことで、左派には専従が大量にいるのだ。左派活動のみを行えば良いわけで、これは活動上も非常に有利である。

それに対し、保守派の多くは通常の仕事をし生計を立てた上で、プラスアルファの部分を保守活動に充てているのが実態だ。大事な家族との時間や、いわゆるプライベートを削り取って、それを捧げて活動を行っている。想像すればわかるように、いわゆる鶴の機織り状態なわけだ。

心を込めて打ちこむ分、美しい反物というアウトプットにはなっており、素晴らしい成果を立ててはいる。しかし、ボロボロになっていく羽も現実としてあり、在る者は職業などの社会的ステータスを断念し、在る者は家族に負担をかけている。私だって批判されて仕方ない面はあったし、まったく後悔がないとは言えない。

保守派は、少数精鋭の兼業活動家。対する左翼は、膨大な専従活動家。瞬発力と気合で乗り切れる部分に関しては押し返してみせるが、大型の案件やマンパワーを消費する場合には劣勢に立たされてきた。今後も同様の状態は継続するだろう。

特に憲法改正を視野に入れれば、ネット上での優勢とは裏腹に、保守陣営は間違いなく苦境に立たされる。いつまでも鶴の機織りを続けさせる状態では、事態は悪化する一方である。左翼は働いていない、その現実は、ここまでの影響を与えてくる、極めて根源的な問題だ。

左翼が働いていない理由は、シンプルに「陣営として資金力を持つ」ゆえだ。ここに動員の謎も、専従として活動家を養っていける構造も、全てがつまっている。一言で説明するならば、労働組合と言いたい。しかし、保守の中でもアンテナの高い方が読まれるだろうから、二言目、三言目を続けることをお許し頂きたい。

単に労働組合と述べることは、実は誤っている。実際は、「官公労の闇」と述べるべきだし、歴史を振り返るならば民社党の大敗にまで遡るべきだろう。となると、保守からは評価もされる山口二矢氏の行いについても、負の側面を論じる必要がある。労働党を持たぬ我が国の政治状況についても述べねばならない。




左翼の資金源の多くは、労働組合に依存していると言っていい。この場合の資金源とは、単に金銭を指すものではなく、専従職員を出す、人的負担をも含む。その場合、多くは労働組合によるものだと言っても過言ではない。

組合費は、天引きの場合が多く、働いている以上、「ほぼ自動的に」安定して得ることができる。安定した収入は、非常に大きな意味をもつ。似た例で言えば、太陽光などの自然エネルギーは24時間安定しているわけではないため、その他の発電の代替にはなりえない。これと同じことが言える。

何がしかの政治案件があり、瞬発的な寄附が集まる場合もある。しかし、組合費を原資としたものは恒常的に入ってくるため、例えば事務所を開設したり、人員を雇い入れて専従活動家を養成することができる。固定費に相当する部分を増強したいのだが、そのためには安定した組織への収入と、それに伴う予算化が必要だ。これを満たしているのは、組合費以外にはありえない。

では、「労働組合=左翼」と言っていいかと言えば、それは実態と異なる。ネット保守陣営は、とかくこの点を誤解しがちであるが、それは現実とは乖離した常識だ。結果的に組合全体は左に触れているように見えるが、それは「上を抑えられている」ためである。

労働組合とは、様々な産業により多くの組合をもつ。正式には、各種産別の単組という用語で説明される。産別とは、産業別労働組合の略称であり、単組とは企業別労働組合である。具体的な名を挙げることは避けるが、ある産業分野においては保守に近い思想をもつ。また単組レベルで見ると、社として保守側にあり、結果的に組合も極めて保守色が強い場合もある。

各社の組合が単組であり、産業ごとに足並みを揃えたものが産別である。様々な産業があり、各種産別の集合体が連合である。そう、民主党の話題となった際、よく耳にした連合。正式には、日本労働組合総連合会である。

単組レベルで見ると左派とは言えない、そして各種産別で見ても左派とは言えない。しかし、これが連合となると一気に左派色が強まる。それはなぜか。

その答えは、「官公労」という言葉に集約される。官公労とは、国家公務員・地方公務員・公共企業体職員などの労働組合で、官公庁にある労組の総称として扱われている。いわゆる自治労(全日本自治団体労働組合)や日教組(日本教職員組合)などが官公労である。

一人の政治家として連合を外から俯瞰した際、「官公労が連合を左に捻じ曲げている」ように見える。異論は受け付けるが、恐らく多くは出ないだろう。連合とは、右も左もいるノンポリ集団であるのだが、この意思決定機関の部分を、左の官公労が奪取しているという構図だ。

言い換えれば、連合の内部において官公労が力を失えば、連合は左の集団ではなくなる。というよりも、本来は、連合自体も左翼ではなく脳みそを蝕まれている状態だ。なぜ官公労は、ここまで発言力を有するのか。それは一重に金である。官公労は、強烈なまでの資金力を有する。

官公労の問題点を指摘してきたが、では官公労の実態はどのようなものだろうか。市議として、各自治体の公務員と接してきたが、私個人の体験談として官公労の実態、公務員の実態を述べさせて頂きたい。最大の問題は、構造と制度であり、チェックオフの問題を解決する必要がある。

■官公労の実態

実は官公労を組織する一人一人にもイデオロギーなどありはしない。多くの公務員は自治労に入っている実態にあるようだが、それは「左翼活動を頑張ろう!」と思って入っているわけではない。想像して欲しい、地方自治体の、例えば市役所に行ったとして、窓口のお姉さんから、奥にいる課長のおじさん、若い係長、市民の前では笑顔で応対し、実はすっごい左!!! という例はどれほどあるだろう?もちろんゼロとは言わないが。

自治労を構成する公務員一人一人を見た場合、実は左巻きと言える人間は、ほとんどいない。市議という立場で、様々な自治体職員を見てきたが、連合を構成する産別の中でもイデオロギー的には相当に薄い集団だと認識している。

ここからは公務員批判にも聞こえるかも知れないし、逆に擁護に聞こえる方もいるかも知れない。公務員とは、自ら考えない仕事なのだ。それを有権者は批判する場合があるが、オリジナリティを出すことは、余り求められないし、さじ加減という冗長性を持たされてはいない。Aという方とBという方がいたとして、ほぼ同様の相談を自治体の窓口でした場合、Aさんには手厚く保護して、Bさんは放置とはいかない。これは厳格に制度として運用されており、そのルールを作るのは政治である。

公務員は(人でありながら)機械の側面を求められる場合もあり、決められたルールに基づき公平に運用することを求められる職業とも言えるのだ。だからこそ争いを嫌い、結果的に議論となる話を嫌う。お分かりかと思うが「左で左で、すっごい左!」なんて色を職場で、全開で出している方には(数名しか)お会いしたことはない。いるにはいるが、ごく少数なのだ。

しかしながら、安定した職業である公務員、ここからの組合費は(組織として考えれば)おいしい。凄まじく美味しい存在なのだ。安定した多額の収入がどれほど組織に寄与するかは前述の通りだが、公務員の組合とは、この観点で言えば最強である。雇用主側から給与を支払う際、先に組合費を天引きした上で(残りを)給与として支払う方法を「チェックオフ」という。言い換えれば、組合に入っていてもいなくても、自動的に引かれて行く。

チェックオフに異論を述べることは、政治に物申すことでもあり、地方公務員が自ら口にすることはあり得ない。また地方議員がチェックオフの廃止を求めた場合、想像できると思うが、職労(地方版の自治労)に支援された地方議員が全力でこれを潰す。

公務員が職務上、求められる内容は述べた通りだが、「大過なく、事を荒立てず」生きていたいのだ、そしてバカ正直に組合費を取られ続ける。問題の根幹は、組合の存在すら法的にはグレーの公務員に対し、チェックオフが認められている点にある。結果、膨大な資金力を官公労は手にする。

納めた組合員(公務員)は左が主ではないと述べた。むしろ、そこにイデオロギーはない。しかし、膨大な、チェックオフに基づき天引きで集められた資金が、左に渡る。そして官公労の上層部は、ここにおいては凄まじく左である。説明するまでもないだろう、事例を挙げるまでもない。

官公労において役が上がっていくと、なぜか左に傾倒していく。共に在る政党が社民であったり、民主であったり、連携する政治が左であるためだろう。
この「少数の左」に多額の資金が渡り、「安定した多額の予算」という凄まじい武器をもって、官公労は連合全体を左に捻じ曲げている。私は、左の資金源をこのように推定している。

「労組が左」という状態を受け入れてはならない。
そういうものだと受けて入れている保守層も多い。実は異常事態なのだ。そして、ここに全ての問題が集約されているため、「労組=左」を常識と思っている方は、一旦、それをリセットして頂きたい。延々と述べてきたため理解して頂けると思うが、それぞれの労働者が左というわけではない。

■「労組=左」は異常事態

考えてもみて欲しい。働いている以上、管理職を除けば、なんらかの労組に入っている方が多い。言い換えれば、そこのおじさんも、隣のお兄さんも、サラリーマンであれば、誰も彼もが労働組合に入っている。「組合=すっごい左」であれば、貴方の周囲の方々も、貴方に内緒で「すっごい左」なのだが、そんな映画みたいなことはない。

正直、誰も彼もがどうでもいいと思っており、政治をするために仕事をしているわけではない、というのが実態だろう。当たり前だ、そこにいるのは「普通の国民」に過ぎないのだから。世論調査の結果通りであり、その答えは「正直、興味などない」となる。

であれば、組合がたくさんくっついた連合の場合、組織としての思想が左に触れることは、実は非常におかしな状態なのだ。官公労の闇とタイトルを振ったが、官公労が資金力(しかも安定予算)を武器に、意思決定フローに色濃く介入しているためだと推定する。

ならば、保守の労組はあってはならないのか。そんなことはない、かつては在った。民社党(民主社会党)の存在こそが、その証明となる。元は社会党である、と言えば条件反射で「左でしょ?」と答える保守が多いと思うが、ちょっと待ってほしい。社会党の右派が独立(脱党)して結党した政党である。漫画に例えると、ドラゴンボールのピッコロ大魔王と神様の関係だ。

例えば、拉致問題を国会で取り上げたのは、民社党委員長の塚本三郎議員の代表質問です。大きく取り上げてくださった西村眞悟先生も民社党の出身であり、実父の西村栄一先生は第二代の委員長を務めておられました。反共を掲げ、いまの次世代の党などより遥かに右に振った政策を進めていました。「国家安全保障会議」の名称を唱えたのも民社党です。社会党と異なり、専守防衛に立つ自衛隊は合憲との立場をとりました。

そして反全体主義・反共の全労会議(全日本労働組合)を支持母体とし、保守系労組は確かにそこにあったのでした。では、なぜ保守系労組は衰退していったのでしょう。ここからは過去の経緯になり、現在の問題点の指摘からは離れますが、これからのことを考えるにあたり教訓とすべき点は多々あります。

■民社党の衰退

結党直後の昭和35年(1960年)、40議席から17議席まで落ち込み、深刻な打撃を受けました。昭和35年(1960年)10月12日、浅沼稲次郎暗殺事件が勃発。浅沼稲次郎(日本社会党委員長)は「米国は、【日中共同の敵】」と述べ、かつ【台湾は中国の一部】で、(当時、返還されていなかった)沖縄は日本の一部ですが、これはアメリカ帝国主義のためという演説を行いました。演説中の浅沼委員長を、当時17歳の山口二矢(おとや)少年が小刀で殺害した事件が、浅沼稲次郎暗殺事件です。逮捕後、「後悔はしていないが償いはする」と口にして裁判を待たず、東京少年鑑別所内で「天皇陛下万才、七生報国」と遺書を残して首吊り自殺しました。




浅沼委員長は、昭和天皇・皇室を敬愛していたことでも知られ、ここは今の左翼とは異なります。非常に人気が高く、刺殺後は44万人もの集会、デモに37万が参加したと言われます。党首を刺殺された日本社会党は、「弔い合戦だ!」として躍進。その煽りを受け、民社党は40議席から17議席と、改選前の半分以下という惨敗を喫しました。

のち、70年後半から80年前半にかけては党勢を回復。1983年には39議席を獲得しましたが、この間に労働組合の左傾化が異常に進行していったと考えています。労組という団体に対し、対になる政党が衰退していたため、左派による労組浸食が浸食していったのでしょう。私の生まれる以前の話ゆえ、様々な先輩方に当時のことを聞き取りしていった感想です。

現在の日本には、本当の意味で労働者のことを考える労働党が存在しておりません。労働者を代表したはずの政党は、労働者の問題を取り上げず、なぜか中国や韓国の国益を代弁しています。政党政治の本筋を鑑みるに、想定されていない状況にあると言ってもいいでしょう。それもこれも、民主主義である以上、国民の判断であり、国民の責任と言うべきなのかも知れません。

民社党のその後ですが、大半の議員は新進党に移籍し解党。所属議員により民社協会が立ち上げられました。事実上の後継とされた新進党ですが、党内対立を経て解党分裂、自由党・改革クラブ・新党平和・新党友愛・黎明クラブ・国民の声に。結果的には、現在の民主党に合流しています。時代の一コマ、ボタンの掛け違えとは不思議なものです。

最後にまとめますが、左翼活動家の一部は働いていません。それは左派陣営の強力な資金源に拠るもので、労働組合の存在を抜きには語れません。安定した継続収入は組織体の維持には、大きな効果を発揮し、官公労の発言力が非常に大きくなっています。地方公共団体(地方行政)のチェックオフの廃止が処方箋となるでしょう。

本来、イデオロギーと無関係なはずの労働者の集合体が、極めて左に触れている現状は異常な状態で、保守派はこれを常識として受け入れてはなりません。それが労組をイデオロギーの呪縛から解き放つ第一歩になるからです。歴史を振り返れば、確かに保守系労組が存在した時代があったのです。左の労組しかいない現代労組が異常なのです。

リアルへの影響として、鶴の機織り状態、自己犠牲で成り立っている保守陣営は、戦線の各所で破綻しつつあり、憲法改正の国民投票においては私たちの陣営は負けてしまうでしょう。早急に改善が必要な分野であり、左翼はなぜ働いていないのか?というシンプルな疑問は、これからの日本の政治を占う上で、極めて重要な問題です。


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